2019-10-08

寂しさを埋めに地下アイドルを見に行ったら、もっと寂しくなった話。

まぁまぁ長いです。暇つぶし程度に良かったら。

リアルで色々あって、心にぽっかり穴が空いた。

その穴を埋めるには、ネットから本音で言わせてもらうが女性しかなかった。女性の柔肌が欲しかったし、かわいい女性承認される事でしか満たされないと思った。

ただ、恥ずかしながら自分は30間近だというのに未だに童貞彼女が出来た事もなく、女性免疫もなかった。

からまぁ、こちらに好意を寄せてくる事が前提の女性に、相手をしてもらうのが一番手っ取り早く思えた。ただキャバ嬢風俗嬢はなにか違う。

そこでたどり着いたのが地下アイドルだった。

売れない地下アイドルだったら、自分現場に行けば喜んだ顔を見せてくれるだろう――つまり承認してくれるだろう。そう思った。

何でも地下アイドルチェキとやらは、アイドルの方から密着してくれたり抱きついてくれるらしいと聞く。なんだそれは、最高じゃないか、よっしゃ行こう。そう思った。

我ながらゲスだし、どうしようもなくモテない男の思考だが、当時の心がボロボロだった自分にはそれしか思いつかなかった。

で、一応チェキ対応が良さそうな地下アイドルを念入りにチェックしてから現場に行った。

ライブが終わりの物販(ちなみに地下アイドルは余裕で物販の方がライブより長い)でチェキを撮る時、彼女は初対面で外面も良くないであろう俺に、躊躇なく抱きついてきた。

チェキにも「来てくれてありがとう、大好き!」と可愛らしい文字で書かれていた。

ライブしかったよ」というと、彼女はすごく喜んでくれた。「また来てね」と彼女は言ってくれた。

俺は心が満たされたのを感じた。

勿論、地下アイドルが抱きついたり、オタクに媚びを売ってくるのは、リピーターを作るための打算ありきの行動だろう。それでも俺は嬉しかった。

から、何回か通った。その度にチェキを撮った。その目当てのアイドルを見て、チェキを撮ったらさっさと帰っていた。


でも、地下アイドル現場に掛かるお金というのは意外とバカにならないのだ。チケット代、チェキ代。現場に行くまでの交通費も考えたら、そこそこのお金が飛ぶ。

なので、何回目かの現場に行った時、初めてお目当ての地下アイドルの出番が終わり、チェキを撮り終わった後も、他のアイドルライブを見る事にした。

ちなみに地下アイドルワンマンライブが出来る程の人気が無い限り、200人も入らない小さなハコで、15組くらいのアイドルが20分ほどのライブ連続してやっている。

その日のライブも、お目当ての地下アイドル以外ほとんど……というか、全員知らない地下アイドル達だったが、まぁ見てやるか(謎の上から目線)程度のノリで、見る事にした。

ノリのいい明るい曲、盛り上がるロック調の曲、それに合わせて舞い踊る地下アイドル

ただ、真剣彼女達のライブを見ている客は、ほとんどいなかったように俺には思えた。

アイドルMCにいちいち茶々を入れるもの彼女達のステージも見ずに、知ってる顔同士の客だけで盛り上がってる奴ら、アイドルからレスが欲しくて、肩車してまで目立とうして、お目当てのアイドルの近くに行く奴。

ライブの楽しみ方は人それぞれ、という言葉もある。が、俺にはただただ騒ぎたいだけ、暴れたいだけの奴らしか見えなかった。

そんな客層でも、地下アイドル達は真剣に歌って踊っていた。

笑顔を崩さず、でも髪型が多少崩れるくらい元気いっぱいに歌い、真剣な表情で踊るアイドル達の姿に、俺は心が動いていた。

から、気づけばそのライブ後の物販でチェキ列にならんでいた。

ライブすごい良かったです! かっこよくて可愛くて元気出ました!」 俺がそういうと、彼女は「ほんと?」ととてもうれしそうに聞いてきた。

わたし、お客さんからいじられるキャラから、そんな事言われたの初めて。嬉しい!」

彼女のその言葉を、俺はリップサービスだと思っていた。

でもその後、「どうしよう。泣きそう」と口に手を当てて言った。「ほんとうに? ほんとに?」と何回も確認してきた。

まるで、サンタさんからプレゼントを貰ったのを何回も確認する子供みたいに。今まで誰も、彼女にそんな言葉を掛けてあげなかったみたいに。

誰も彼女アイドル扱いしなかったみたいに。

「また来てね! また会おうね!」彼女チェキの別れ際に俺の手を握ってそう言ってくれた。

それもリップサービスなのだろう。きっと彼女は、どんな客にでも愛想よくそう言っているに違いない。

でも、俺にはどうしてもその言葉が、ただのリップサービスには聞こえず、曖昧に笑うしかなかった。


ライブの物販コーナーには地下アイドル達がたくさんいた。物販コーナーに人だかりがあるかないかで、その地下アイドルたちの人気がわかる。

やはり人気があるのは、かわいい衣装をきて、コミュ力(というかチェキ力)があるアイドル達だ。

ロック系の地下アイドルたちの物販は閑散としていた。

先程までステージ上で「現実なんてぶっ壊せ、限界突破しろ」的な歌をイキイキと歌い踊っていた彼女たちが、今現在自分たちの人気という現実と、閑散としている物販という限界をありありと突きつけられている様を見ているのは、あまりいい気分ではない。

それでも彼女たちはめげず、諦めず、チラシを渡してくる。受け取るとその瞬間だけ笑顔になる。目が輝く。きっとそれは、彼女たちが自分たちの未来を信じているからだ。

子供のようにまっすぐで純真な瞳を、俺はどうにも直視できなかった。

解散卒業アイドルにつきものだ。

それは地下アイドル例外ではない。いや、地下アイドルの方がもっと顕著だ。地下アイドルオタク初心者の俺ですら、誰かの卒業ライブやら解散ライブやらの情報バンバン入ってくる。

アイドルに飽きたのか、限界を知ったのか、わからない。でも大半の地下アイドルが2~3年で消える。

から多分、俺に抱きついてチェキを撮ってくれた彼女も、「ほんとうに?」と何回も確認してきた彼女も、ロック系の地下アイドル達も、多分、数年後には、多分。

そこまで考えたところで、心に空いた穴が、さらに大きくなっているのを俺は感じた。

寂しい、寂しい、ただただ寂しい。寂しさは大きくなっていくばかりだ。

このライブ後のロス感は耐え難い。きっと大半の地下アイドルオタクはそうなのかもしれない。

から俺は、また地下アイドルライブを予約した。

おそらく次ライブ後は、もっともっと寂しくなると分かっていながら。

  • あの場のオタクの承認欲求というのはなんだか辛いよな。アイドルを見たいというか、みんなで騒ぎたがっている。もちろんそれが楽しいのは否定しないけれど。 でも好きなアイドルが...

  • 「サビシクナイ」のほうがオトナ(というか爺さん婆さん)が子どもたちのために作り出した幻想なんだよ クールジャパンコンテンツなんて全部そう

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