はてなキーワード: 樺地崇弘とは
思い返せば私は生まれてから30年以上一度も生身の人を好きになったことがなかった。
跡部様やルルーシュに恋をしやことはあっても、三次元の男には興味すら湧くことがなかった。
そんな私が30歳を越えて婚活を始めた。
間もなく定年を迎える親を早く安心させたいという思いがあった。
婚活パーティーは異性と上手く話せる自身がなかったので、ひとまずインターネットの婚活サイトへ登録した。
しかし、いざ会うとなると気が進まなかった。
メッセージのやり取りだけで会おうとしない私の態度が影響し、時が経つにつれて音信不通になる人が多かった。
そんな中、6ヶ月ほどメッセージをやり取りしていた男性が居た。
メールをする話題も尽きてきた頃にその男性と会うことになった。
会う前日は何を話そうか頭の中でシミュレーションし、眠れなかった。
当日待ち合わせの場所へ行くと、その場所へ現れたのは樺地崇弘のような容姿の男性だった。
全く私の好みではないが、自分が他人の容姿について贅沢を言える立場ではないのは心得ていたので数回会うことにした。
彼は根気よく私の話を聞いてくれた。
なにより私のアニメ好きを暖かく肯定してくれたのが嬉しくて付き合うことにした。
デートのたびに彼は私のことを好きだと言った。
「好き」という感情がわからないままだった私は、それに対して「ありがとう」と答えた。
1年程付き合った頃、彼にプロポーズをされた。
相変わらず恋愛感情というのがわからないままだったが、この人とならなんとかやっていけそうだと思ったので承諾した。
結婚の準備をする中で彼の新たな一面を知ることがきた。
将来のビジョンを明確に持っていて、話し合いながら私の意見も尊重してくれた。
結婚の準備をしながらひとつひとつ彼のことを知るうちに「好き」という感情が芽生え始めた。
しかし私は異性にそれを伝えたことが一度もない。
付き合う時ですら「付き合ってください」と言われて「はい」と言っただけ。
プロポーズされた時ですらそう答えた。
好きという感情をどう伝えれば良いのかわからず、一週間悩んだ。
私の父のお見舞いへ行った帰り道、疲れた彼は新幹線の中で眠ってしまった。
トイレに行くフリをしながら回りの座席に乗客がいないのを確認する。
そして再び席に座って深呼吸をした。
私は蚊の鳴くような声で「○○くん、好きだよ」と独り言のように呟いた。
すると眠っていた筈の彼が目を開けて飛び起きて、私の方へ向き直った。
彼の顔はみるみるうちに紅潮し、目には涙が溜まっていた。
そんな表情を見たのは初めてだったので、それを愛おしく思えた。