2022-02-04

タコピー原罪は歪んだ救済の物語

タコピーまりなを殺す前のしずかは、「どうせ何も変わらない」ばかり言っていた

何も変わらない、逃げ出せない、しかし、タコピーまりなを殺してそれを変えられた

人は殺せる、殺したら変わる、という発見

最悪なんだけどこれはひとつの救済だろう

次、まりなは「変えたかった」

しずかの母さえいなくなれば、パパはママとまた仲良くなって幸せな家に戻れるはず

現実は、不倫をやめたからってすぐ元に戻れるほど、家族簡単ではない

結局何も変えられずまりなは死んだ

死は現状からの逃亡であり、ひとつの救済の形である

まりちゃんは救済された

そう考えると、初期しずかの死だって救済だった

このような、歪んだ救済を進めていくのが物語パターンと読んだ

そして、いま問題に直面しているのは東君

彼は、母の期待通りに能力を発揮できず、母の愛を感じられないのを問題と感じている

この問題から救済される方法はいくつか考えられる

1. 彼が兄をしのぐほどの能力をつけ、母を満足させる

これが正攻法。でもそれができないから現状がある

2. 東君死ぬ

死は救済。これはしずかもまりなもそうだった。

でも、ここで東君死ぬ線は薄い気がしている

3. 兄が死ぬ、もしくは兄が母を失望させる失態をする

これは兄がグレたり、犯罪者となるパターン。具体的にはまりな殺しの罪を引き受ける、もしくは犯人に陥れられる

兄さえいなくなれば母は自分だけを愛するはず、という考えはあり得るだろう

実際は、兄が潰れたって母の愛が東君に移ることはないのは自明だが、東君はそれを期待する、というのはこの物語ではありえる

でもさすがに死に過ぎなので潤也は死なないと考える

4. 母が死ぬ、もしくは母が壊れる、または完全に母に見限られる

愛して欲しい人がいなくなったら、もう母の愛なんか求めなくてもいい。母の死の線は薄いとすると、具体的には、母の病院の信頼の失墜、もしくは病院の全焼などが想定

東君殺人犯と評判になることでも満たせるので、さくっと警察に行けば母への当てつけになるので、それでもOK

ただ、兄が割って入ったのを見るとストレート自首はないから、証拠品の病院保管、それをしずかが密告、などもあり得る

証拠隠しのごたごたで病院トラブル、というのは想定できる

実際は母がいなくなっても何にも満たされないんだけどね

5. 東君の母からの逃避

母さんなんか嫌いだ、と思い込んで自ら母を捨てればもう母を求めなくて済む

しずかのキスと抱擁は。東にとっては十分すぎるほど母の代わりとなる事象だった

要は母や兄、家から逃げ、しずかの元に行くことが救済となるので、しずかが救いの女神である

まり東君非行、まあ、殺人したというならそれは十分な非行なんだが、それに留まらず母や家族を避けるほうに動き、不良少年になっていくのではないか

もちろんこれは全てから目をそらした逃避でしかなく、負け戦の碁盤ひっくり返しみたいなもんで、もちろん解決じゃない

この線はしずかのファムファタルっぷりがもっとも色濃く出るので、個人的にはこの線を推したい

「兄の制止を振り切り東君警察に行き、事情を察した兄はしずかのところへ行く」という展開を予想する

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