2021-05-21

酸っぱい武道

朝5時。酸っぱい武道の鍛錬は霜が降りる時刻から始まる。

床磨きの雑巾に酢をつけて往復。道場中の床が酢酸で清められる。

立ち込める酸っぱい匂い

5:30、瞑想。拳をももに立てたまま酢の匂いをかぐ。いつでも身構えられるようにするためだ。

6時になるとお酢ボトルを持った道場生が道場に整列する。

それぞれが「お酢!」と元気よく挨拶。型稽古では実際の酢は使用しない。

稽古でしっかりと汗を流したあとで、7時から持久力トレーニング

お酢を掛け合い、試合ギブアップしないための胆力を養う。

8時になると乱取り稽古がようやく開始される。

お互いが素早い動きでボトルを制したり、素早くキャップを開いて相手にかけたりする酸っぱい武道本来競技に立ち戻る。

乱取り試合の開始はまずお互いが納刀ならぬ納瓶の状態からまり、始めの合図とともに素早く抜き取って相手にかける。

最近近代化が進んでスウェー、ダッキング、ウィービングなどの近代ボクシングテクニック披露するものも多く、ヒートアップして思わず相手の足にローキックを放ってしまう微笑ましい面も。

酢は関係なくないですか? と度々取り沙汰されるのだが、ルール上は特に禁止されていない。

なんならテイクダウンしてマウントパンチを放っても良い。

決め手は基本的に酢を相手の顔にヒットさせて「すっぱ!」と言わせたほうが勝ちだ。

声が小さく、すわ、すぱ程度の驚き方では有効1ポイントしかない。

2ポイント合わせ一本を取るしかなくなる。

酢をかけておいて大きく後退するなどの「かけ逃げ」はイエローカード扱いなので、多用すると合わせ一本を取られる。

こうして乱取りが終わるとそれぞれの道場生たちは薄めた酢で道着を洗い、スイーツ(※寒天で固めた酢を食べること)を先輩たちとともに行う。戦士に休息はない(し、後輩は笑顔で食べなければならない)。

師範以上になると黒酢使用が許される。よりまろやかで動きが掴みにくく、上級者向けである

かかった相手もあまりのまろやかさに旨味を感じてしまい、なかなか勝負が決しない。

こうして酸っぱい武道の一日は終わる。

なお、競技化しているのは今回取材した一団体だけであり、全国的にも他団体存在確認されていない。

  • 酸っぱい武漢に見えた

  • そもそも夏場の剣道の防具はお酢なんか使わなくても酸っぱい匂いになるだろ

  • そしてこの武道を極めることができなかった俺は思った「きっとこの武道は…」

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