マア、何を読んでいらっしゃるの。
本から顔を上げると、コオヒィを運んできた女給のマチコが本を覗き込んでいる。
これはフェニミ神という古代オリエントの神の言葉をまとめた本で、現在まで続くフェニミズムという神秘主義の原典にあたるのだ、これに後世の学者の解釈文をあわせて、一般的にはディルドオと呼ばれているのだよ、と私は講釈をぶったものである。
この小さく爪で引っ掻いたような痕が文字なのねえ、と彼女はコオヒィをテエブルに置きながら不思議そうに眺める。
これはシュメエル語と言って、古代の人がもともとは粘土に刻んだもので、後の世代に宗教思想や儀式を記録するために使われたのだ、人類の歴史の中でも最も古い言語の一つだが、それを使って書かれたディルドオに現れている思想は、きっと君でも驚くような先端的なものなのさ、と私はますます得意になってまくしたてる。
すごいわねえ、フェニミズムって、どんな思想なの。
ひとことでいえば、徹底した自然法則の崇拝だね。人権などというものは存在しない。すべては自然が司っているという思想さ。人間が勝手に作り上げた「思いなし」を洗い流して極限まで自然に従って生きるようにすれば救済が待っているという思想さ。
つまり人間がそれぞれ自然に定められた動きに従って生きよということさ。それに従えば女は産む機械だから、どんどん性交してどんどん子を産むがいい、だが母子の愛情とはじつは人為的なものだから、作った子供を必ずしも愛情を持って育てる必要はないということさ。現代の日本でも赤ちゃんポストというものがあるらしいが、古代にはもっと進んでいて、男も女も育児院という場所に自由に子供を置いていけば、あとは国家が大量に子育てを行っていたのさ。そこに来て子供を労働力として買っていくこともまた自由だった。
それならなんだか私にもわかる気がするわ。最近、もっと自由になって、ここではないどこかに行ってしまいたいって、思ってばかりいるのですもの。マチコは隣に腰掛けて潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。
扉が開いて、詰襟制服の学生たちが入ってくる。我が物顔で奥に陣取ると、ウインナアコオヒイなどと大声を上げている。マチコは立ち上がって注文を取りに行った。
窓の外を見ると、灰色の空にまた雪がちらつきはじめていた。
気になったので、ざっと検索してみた。 anond:20201212100651 anond:20201212172145 anond:20201213153454 anond:20201214180522 anond:20201216230836 anond:20201221223340 anond:20201223224203 anond:20201225111341 anond:20201226224817 anond...
どういうことかと思ったら フェミじゃなくてフェニなんだな なるほど