姉は完璧な人だった。
めちゃくちゃ器用だったわけではないと思う。むしろのんびりした性格で、それが大人たちに好かれる要因だった。
のんびりして優しいが、努力家でコツコツ勉強して、小さい頃から学校の先生になるのが夢の、良い子。
対して私は、子どものくせに口が達者でずる賢くて、生意気なことばかり言って、がんばらなくてもまあまあ勉強のできる、かわいげのない子だった。
姉は着々と成功の道を歩み、幼い頃の夢を叶え、イケメンでやさしくて世間から羨まれるような職についた男と結婚し、家を出た。姉が家を出たときには、私は解放された奴隷のような心境だった。期待されていたことすべてを叶えられない私に姉は冷たかった。嫌われていたわけではない、多分。ただ、昔は器用だと言われていた私が姉よりも散々な人生を送っているのを見て、努力不足だと思ったようだ。
姉は私にとって呪いみたいなものだった。友達もいない、彼氏もできない、頭が悪くて運動神経も悪い、最悪な私と、正反対な姉。
完璧な姉にも、ひとつだけ叶えられないことがあった。それは子ども。結婚して何年経っても授かれず不妊治療をしているらしいことは親戚中で触れられないタブーになった。それが今年、姉にもようやっとコウノドリがきたらしい。安定期になるまではまだわからない、と何度も念押ししながら、エコーの写真を見せてくれた。
予定日は私の誕生日のすぐ近く。私はなんとも言えない気持ちになった。端的に言うなら、とにかく無事に生まれてきてほしい、と。
私は人間に生まれてきたことを何度も後悔したような種類の人間だ。何度も自殺未遂をした。一生子どもをつくる気はない。そんな資格のない人間だから。人間の世界が怖くて、気持ち悪くて、大嫌いだ。くわえて姉のことを憎んでる。私の気持ちなんて1ミリもわからないくせに家族だからと踏み込んでくる彼女が。もう関わり合いになりたくないし、彼女たちが帰省する日が一年で一番憂鬱な日だというのに。
それでも、姉の子が、無事に生まれてきてくれたら良いと、思った。こんなにたくさんの人に望まれて、やっとやっと授かれた子。姉なら、義兄なら、きっと不自由なく、愛情を持って育てられるだろう。私はそれを知っている。
しゃぶれよ
ミソジニーさんかな?
なんか百合創作感がある。