2020-01-25

桃太郎

民間軍事会社経営する実子が出来なかった老夫婦は、赤子をさら養子にし、訓練を施して後継者とした。桃太郎と名づけられた赤子は、継承した資本力を活かし、犬・猿・雉を僅かな賃金きびだんごで雇い、鬼を倒して財宝を接収し、名を成した。老夫婦引退後の生活身分保証されたと喜んだ。

だが、桃太郎のみが名声を得、その兵卒であった自分たちが省みられないことに、猿は不満であった。桃太郎が得た財宝に対し、自分たちの取り分があまりに僅かであったことに、犬は不満であった。そんなある日のこと、雉は老夫婦の会話を盗み聞きしてしまい、桃太郎の出生の秘密を知ってしまう。正義感の強い雉は、義憤に駆られた。

雉は、犬と猿をつれて、老夫婦を成敗するのであれば、我々が助太刀すると桃太郎にもちかけた。桃太郎は答えた。なるほど、老夫婦悪人であり、どうやら自分被害者だ。しかし老夫婦がその悪事を行わなければ今の自分地位はなく、さほど恨む気にはなれない。犬は、老夫婦の取り分を山分けできると、付け加えた。桃太郎は答えた。なるほど、老夫婦の富を山分けにすれば大きな利益だ。しかし、悪人とは言え育ての親、親殺しの悪名は避けられない。それを聞いて、猿がけたたましく提案した。ならば犬と雉と私が誘拐犯として老夫婦を誅殺するから、それを見守って欲しい。ただし悪党討伐の栄誉は我々だけのものだ。桃太郎は、じっくり目を瞑って考えたあと、それを了承した。

3匹は、すぐに老夫婦を討ち取った。陰で見守っていた桃太郎は、手勢を引き連れ出てきて刀を抜いた。雇い主に刃を向ける不埒な輩、今すぐここで成敗してくれよう。3匹は話が違うと慌て、老夫婦誘拐犯だったと申し立てた。桃太郎は、被害者でも無い3匹が、勝手私刑するのは話がおかしいと否定した。3匹は観念して桃太郎に言った。我々に老夫婦を誅殺させてから、我々を討って財を独占するつもりであったとは、とんだ独占欲の塊よ。桃太郎は涼しげな顔で答えた。資本家は三手先を読んで動く。二手先を読めない労働者風情は、モノ化され、賃金の鉄則に甘んじるべきであった。3匹は浅慮を嘆く間もなく、成敗された。

満面の笑みの桃太郎。ところで、自分はどこからさらわれたのであろうか。体格は、老夫婦どころか人間離れしている。性格は、冷酷な決断を辞さな自覚はある。良心の呵責は無い。犬・猿・雉の最期を思い浮かべると、心躍る。産みの親がどれほどの傑物か、聞き出せなかったのが残念だ。最近ひたいに出来た瘤を触りながら、そう呟いた。

  • なろうっぽいけどうまい👍 考えてみれば本筋だけ見ればなろうじゃんての多いな100年単位で昔の書も 人間の本質は変わらんのかも知れん

  • おにでしゅ

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