「わっほーい、僕は班長のダマスカスと申しまする。よろしくござまーす」
「モーマンタイよ、マスダさん。部下の名前を覚えるのは上司のタシナミン。しっかりインプット済み」
職場の快適度は上司の人柄が大きく関係しているといわれている。
「あれ、制服に着替えなくてもいいんですか。私服のままなんですが……」
「いやー、そういうのウチはないっぽいんで。あ、でも、お色直し?……とかしたいならシャワーとか、メイクするところはありますぜ」
職場に着くと、そこには既に働いている人が数名いた。
出来たばかりの部屋なのか、掃除が行き届いているからなのか、職場全体が広くて小奇麗だ。
反面、各持ち場は私物らしきものが置かれており、独自の空間を作り出している。
「割と自由にやれるんですね。これだと問題が起きたら大変じゃないですか?」
「そういうのはオカミさんにお任せですよ。僕たちは与えられた仕事だけ適当に……『適当』の使い方あってますけ?」
「合ってる、と思います」
「うーん、合ってる。良かった……まあ、そんな感じで、やることやって問題が起きるんならオカミさんの責任ってなもんで。僕らが気にすることじゃございやせん」
下働きの人間に責任がないというのは結構なことで、とても働きやすい職場といえた。
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