合わない友達がいる。
私は積極的な性格でないため、友達は両手で数え切れる程しかいない。
その数少ない友達の中に、どうしても、どうしても合わない子がいる。
その子とは大学が始まってすぐに知り合った。背の高い、フレアスカートの似合うスラリとした女の子だった。
大学内ではいつもその子(以下、エーコ)を含めた4人で行動した。講義が被れば隣に座り、昼ご飯の時間にはLINEで示し合わせて一緒に食べた。他愛もない話で盛り上がり、意味もなく写真を撮りあいっこしたりした。
でも、たまに、彼女の考える価値観と合わないことがあった。まあ人それぞれ違う個体なのだから、当たり前なのだけれど。
エーコは何事もハッキリ言う。あれが嫌い、それは興味ない、これが好き、これはかわいい。
私にはない、素敵な長所だと思った。けど、ふとした瞬間、彼女のそれは周りを傷つける刃となることもあった。
いつものメンバーの中に、天下のジャニーズが好きな子がいた。その子は、その手の雑誌をたくさん持っていて、時たま大学に持ってくる時があった。
エーコはそれをチラと見て「私これ興味無い。全然メンバー知らないし。これが今流行ってるの?なんだか皆、顔白くない?コワ」
あーあ、と私は思った。焦ってフォローしたけど、遅いなあと思った。雑誌を持ってきた子の顔が引きつってるのが分かった。
エーコはそういうところがあった。自分の意見ばかり先へ先へと押し出して、相手の気持ちを考えてくれないところがあった。私はそれを聞く度、気分がずん、と重くなった。
一度苦手だと思ってしまうと、エーコの嫌なところばかりが目に付いた。
電車でも平気に大声で話すところ、自分が正しいと思っているところ、話し方、言葉選び、仕草、考え方…
そういうところを見つけてしまう度、ああ嫌だな 合わないな、毎日会うのが耐えられないな、と感じた。
限界に近かった。
彼女を苦手と感じる自分にも嫌悪したし、相手の嫌なところしか見つけられなくなっている自分に吐き気がした。
私は、私の為に距離を置いた。エーコは何一つ変わらなくて、非はなくて、ただ私が、私と違う彼女に耐えられなかっただけ。
講義が被っても向こうから来ない限り接触は減らしたし、少し冷たく接した。
彼女の目に、私はどう映っていただろう。気分屋な面倒くさい友達、人によって態度を変える嫌な奴、そんなふうに見えていただろうか。分からない。
面倒な友達でごめん、冷たく接してしまうのは自分でも 嫌なやつだな と 私だったら友達やめてるのに と思う。でも、でも私はエーコは合わなくて、ずっと隣には立っていることが出来ない。私も私が嫌い。