ある日、日課の芝刈りから帰ってくるとおばあさんがでかい桃を携えて帰ってきたところだった。芝刈り用具で桃を割ってみると中から小さな男の子が出てきたので「桃太郎」と名付けたんじゃ。わしがしたことはこれくらいかな。え、この財宝? これは桃太郎が持って帰ってきたものじゃよ。
いつもと変わらない日、川へ洗濯に行くと川上から「どんぶらこ、どんぶらこ」という異音がしたのでその方を見てみると、とてつもなく大きな桃が流れてきた。桃を拾い上げて持ち帰ったんだ。中から男の子が出てきて、おじいさんは「桃太郎」と命名していたね。大切に育てたさ。
やがて、桃太郎は「鬼退治に行く」とか言い出したのできびだんごを持たせた。わたしがしたことはこれくらいかな。
何かいい匂いがしたので近寄ってみたんだ。美味そうな団子だったね。「ください」と言ったら「等価交換だ。ついてくるならあげよう」と言われたので、ついていった。それがあんなことになるとは夢にも思わなかったワン。
怪しげな男に犬が隷属していたので興味本位に近寄ってみると、男はごちそうを携えていた。「くださいな」と言ってみたら「わたしの指示に従うならあげよう」と言うのでついて行ったよ。何しろ美味そうな団子だったからね。鬼? 誰だいそいつは? ウキキキ。
変な男と犬と猿が歩いていたね。そのコミュニティに参加したいと思っていたら、男は美味しそうなものを持っていた。あれは魔力だね。「くださいな」と男に言ったら「これから鬼の征伐に行くんだ。共闘するならあげよう」と言うのでついていったよ。戦いには興味がなかったが、花より団子だからケーン。結局、鬼ってのは誰だったんだろうね? わたしは会ったことがないのでわからないな。
何かいきなり来たんですよ。「征伐だ」とか言って。正義感を振りかざす男一人と動物が三匹いましたね。数の暴力。お父さんはこてんぱんにやられました。理由? わかりません。何しろ突然だったもので、何が何だか。財産もすべて奪われました。せめて父さんを返してほしい。だけど、あの平穏な日々は戻ってこない。なんで罪もない父さんはこんなことにならなければならなかったのでしょう。父さんが「隠れていなさい」と言ってくれたのでぼくは命を救われましたが、あんまりです。犯人には死罪を求めます。今はその一心です。
知りませんよ。じいさんとばあさんが鬼ヶ島へ行けって言ったんです。そこに行くといいことがあるよ、って。鬼? ぼくが殺したのかって? まさか。何もしてませんよ。犬と猿と雉が勝手にやったことです。ぼくはあっけに取られていたのですから。「おい、やめないか」とも言った。だけど、あいつらは喜び勇んで鬼の命を弄んだんだ。正直、見てられなかった。
財宝? 知りませんよ。おじいさんとおばあさんの家で見つかった? 証拠もある? まさか。ぼくが鬼ヶ島から強奪してきたものとでも言うんですか? 馬鹿言わないでください。ぼくは知りませんよ。
あ、そうだ。浦島太郎とか言うやつが怪しいんじゃないですか。亀をいじめてたとかいう噂がありますよ。あと、ほら、金太郎。熊を撲殺したとか。恐ろしいですね。ぼくにはそんな無謀で残酷なことはできないなぁ。疑うなら先にやつらを調べたほうがいいんじゃないですかね。