ジャンルとしては音ゲーなのだが、結論から言うとそのストーリーの厚みが素晴らしい。
今までも沢山の濃密で質の高い話を提供してくれてきたのだが、特に今実施中のイベント、「What a Wonderful World!」における氷川日菜の描写は凄まじい。
日菜はいわゆる「天才キャラ」で、大抵のことはすぐに習得できてしまう。
そして努力しても上手くいかない人間に対して「なぜ出来ないのか理解できない」と一切の嫌味なく言ってしまえる「人でなし」だ。
この孤独な怪物が、Pastel*Palletsというバンドのメンバーとして他人との交流を深める中でどうなるか。
普通の漫画/アニメ的な展開ならば、メンバーとの絆を深める中で自分は一人ではないという人間的情緒を知り、他人との共感を覚えて理性を獲得していくーーそんな話になるだろう。
日菜は「他人は自分とは違う、理解できない、だからめちゃくちゃ面白い」と言ってのける。
そして、同じバンドのメンバーである千聖は日菜に関して「天才故に誰のことも理解できず、誰からも理解されない」と認識する。
確かに絆は美しかろう、理解は大切だろう、しかしそんな手垢のつきまくった、何の説得力も無い「怪物の人化物語」などではない。
ストーリーのテーマを完全に読み解くには恐らく哲学的教養(特にドイツ観念論)が必要になるのではないだろうか。
とにかく凄い。
オートで流せば35分程度の短さ、しかも他にも山盛りの要素を入れないといけない制約の中でこんな深い話を書けるライターが、なぜスマホゲーの仕事をしているのか…。
ぜひ名前を出して欲しい。
本人乙
ガルパやってる人やたらシナリオ良いって言うけどアニメがあれじゃな…