僕の甥はとあるロック・バンドでボーカルをやってるんだけど、最近少しだけ売れてきた。
まだ全然それで暮らせるレベルではないけど、売れないミュージシャンと名乗れる程度にはなってきてて、地方でのサーキットイベントだけど一応「フェス」と名の付いたイベントに今度出演するそうだ。
彼のクズっぷりとその悪行三昧は半端なくて、僕はそろそろ半世紀近く生きているけど、彼以上のクズを今のところまだ見たことがない。
彼の周りはもれなく彼を見捨て、二親等内の親族は全員なんらかのメンタルヘルスを患い、特に一番近い親族は人生をかなり足踏みさせられた。それはきっとその人の人生を既にそこそこ台無しにした。
彼の祖父(僕にとっては父)は、関わったストレスでとある病気を発症し、それは完治する類のものではないので身内の労働力は祖父が死ぬまでその介護に全部持ってかれる。
その彼がライブやフェスでファンを前にして、頑張ってる自分らをアピールして、過去の悪行三昧をまるで武勇伝のように語る様を想像したら、腸が煮えくり返るし、彼をどうにかしてしまいたいくらいの気持ちに駆られる。
困るのはその気持ちが聴く側の気持ちに影響することで、僕が敬愛するミュージシャンたちも一皮むけばそんな人物像なのかもしれないと想像してしまう。そうなると、これまでみたいに素直に音楽を聴くことができなくなってきた自分がいる。
彼がこれからもしもっと売れて、国民的に知られるようなレベルになることがもしあったら、きっと過去の彼の行動は全て正当化され、彼を作ってきた要素として肯定して語られるときがきてしまうだろうと思う。
そうなると僕はたぶん自分をおさえられず、彼をボコボコにしてしまうと思う。
音楽で食うってのはそんなに簡単なことではないと思うから大丈夫だとは思うんだけど、そういう日が、クズが認められる日が来ないように、彼が売れないでいてくれるといいな、と切に願ってる。