2017-12-09

君の名は。』で新海誠は死んだ

俺は『秒速5センチメートル』を新海誠最高傑作だと信じて疑わずにいる人間だということを、予め言っておく。

君の名は。』、去年の夏に公開されるまで、久々の新海誠の新作映画ということで心底楽しみにしていた。

公開前に発売した『小説版 君の名は。』は発売日に買ってその日のうちに読んでいたし、神木隆之介も好きだったから、これはもう間違いない、

秒速5センチメートル』以来の大物が来る、と期待を胸に公開を待っていた。

でも、その時から、心の片隅で、ほんの少しだけど嫌な予感はしていて、それは公開後に的中した。

俺は新海誠の、あの陰鬱で薄暗くて救いようのない世界観が好きなんだ。

ドロっとした恋愛観で語られる男主人公背中が好きで、やっぱり俺は『秒速5センチメートル』が大好きなんだと思う。

遠野貴樹に自分を照らし合わせて、たまらなくなる。

そうして、公開直後に胸をときめかせて見に行った『君の名は。』にはかなりのショックを受けた。

これまでのような人を選ぶ作風ではなく、エンタメに富んだ、大衆的で王道の展開に、ベタベタラブコメディをぶち込んできた。

開始30分ぐらいでそれがはっきりとわかると、目を背けたくて、我慢できなくて外に出たくてどうしようもなかった。

でも、これはしっかりと目に焼き付けて、この事実自分に刻み込まなければならないと、拷問に近いような感覚最後まで見届けたのを覚えてる。

これまでと一貫しているのは、背景美術の美しさだけであった。

背景美術は確かに、素晴らしかった。前作の『言の葉の庭』以上だったと思うし、とどまることを知らないようだった。

この酷い映画を見終わった、劇場からの帰り道、俺は少しずつ「新海誠は死んだ」ということを理解し始めた。

過去作を全否定した『君の名は。』、しかし俺とは反対に世間評価は大絶賛だった。

世間はこの酷い映画を"新海誠代表作"と称し、過去作には目もくれずにエンタメ監督としてもてはやした。

違う、そうじゃないだろ。

君の名は。』を見て、それを新海誠だと思っている彼らのほとんどは、馬鹿である阿呆である

君の名は。』を気に入ったミーハーな彼らは、同監督の『秒速5センチメートル』を見て、失望するのである

鬱だ、暗い、つまらないと吐き捨てる。全くもって、ありえない。

ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』を経て、『秒速5センチメートル』は完成した。

本来はこの過程こそが新海誠なんだ。

どうしてこんなにも変わってしまったのか、困惑するばかりである

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