大学時代は、男性としてまったく意識してなくて、ただ同じ大学の同期で友達、という感じだった。それがお互い卒業して社会人になり、4~5年してからちょいちょいLINEをやり取りするように。内容は、読んだ本の感想や、仕事のぐちなど。たわいもないことばかりで、ひと月以上間が空くときもあった。
普段は遠くに住んでいるので、会うのはたまに帰省したときの同期の飲み会くらいだけど、会ったからって二人きりで話をするわけでもなく。
そんな期間が数ヵ月続いた。
そして今年、ゴールデンウィークに行きたい場所があった。同じ趣味の人として、一番に彼のことが思い浮かんだ。そしてあまり後先考えず誘ってしまった。
ここで認めておかないといけないが、もちろん下心はあった。彼に対する恋心というよりは、対象を問わない性欲のようなもの。28歳で、処女で、性欲はあって、自分でも少しもて余していたことは事実だ。
相手は男性らしさ皆無でコミュ障。でも穏やかでやさしいひとだし、趣味も話も合う。もし相手が友人ではなく男女として一線を越えたいと思ってくれるなら、それもそれで素敵かなと思った。
ただ一方私としては貴重な話し相手ではあるし、変に関係をぶち壊したくはないとも思った。私から性的な関係を求めて、幻滅されたりしたらいやだった。何より一方的に私のわけわからないやるせない性欲の捌け口にするのは絶対避けないと、と思って、一泊だけどホテルは別でとっておいた。
それぞれ部屋に入った後、少しLINEしただけで、それきり音沙汰なし。
あ、これは本当に女として興味ないんだな、と思った。相手にその気がないのに私から誘って関係を壊したくはないし…と少し残念がりながらも就寝しようとしたら、「ちょっとそっちの部屋に行っていい?」とLINE。
来たら、並んでテレビを見た。30分くらい。
なんだろうと思った。部屋に来たい、と言ったので、えっちなことをする気になったんだと思っていた。なんで二人で「月曜から夜ふかし」を見ているんだろう。確かにコミュ障だから、うまく誘えないのかもしれない。やはり私から誘うべきなんだろうか、などと考えているうちに、彼がちょっと改まって言った。
「ちょっと体を触らせてもらえませんか」。
びっくりした。
ダメなわけないだろう。こっちから旅行に誘ったんだから。下心もあったんだから。
そもそも「体を触らせてもらえませんか」ってなんなんだ。その言い方は普通なのか。
とりあえず、はい、と言って、触りたいように触ってもらった。電気を消して、服を脱いだ。
そのあとのことは…。
指で触られてとっても濡れたし、気持ちよかった。
ただ、挿入することはできなかった。相手も童貞、私も処女で、全然うまくいかなかった。
そのあと朝、寝起きを1回襲われ、2日目の夜も1回、触りあったけれど、いずれも挿入はできなかった。しようとしたけど、なんかうまくいかなかった。
私は濡れていたし、相手は固くなっていたのだが、それで結局、どうすればいいの?
相手はうまくいかなくて恐縮してた。自分も申し訳なくて、口でした。「出してもいいよ」と言ったけど、「いい」って言う。「出すとそういう気持ちじゃなくなってしまうから」「そういうものなの?」「そういう面もあります」。
…よく分からないけど、そんな感じで、とりあえず帰ってきた。
私は明日から仕事があるので戻るし、まあしばらく会わないと思う。
付き合う、というような口約束もしていない。遠くに住んでいるし。
今思えばなんだったんだろうと思う。
ワンナイト(不発)だったんだろうか。
また今まで通りLINEできるんだろうか。また会って同じようなことするんだろうか。付き合う、とか言うんだろうか。言わないんだろうか。
これは一線を越えたんだろうか。