河川敷に着くと、そこには意外な姿があった。
「カジマ、お前もここに来ていたのか」
「……っす」
だが、カジマは妙によそよそしい。
要領を得なかったが、すぐに理由は分かった。
「カジマ、お前がやったのか」
近くにあった火元、そしてカジマのもつ道具がそれを物語っていた。
「い、いや、それは全くの無関係っす!」
「『それは』ってことは、ここの河川敷でのボヤ騒ぎはお前がやったって認めるんだな」
カジマは否定も肯定もしなかったが、この状況でのその反応は、ほぼ答えを言っている様なものだった。
「なぜそんなことを?」
弟たちには分からないだろうが、カジマを知る俺とタイナイは何となく分かっていた。
火の流行に感化され、自分でそれを起こしてやろうだとか、その自分が起こした火に群がる人間を見たかったのだろう。
カジマはこういった、大して心にもないことを言ったりやったりすることに快感を覚える。
俺たちはそれに慣れているとはいえ、さすがに今回の一件は些か性質が悪い。
「いくら注目させたいからって、自分で火を起こして、しかもそれを天災みたいに言うのはどうかと思うぞ」
「でも……ほら、『火のないところに煙は立たぬ』って」
「火を起こしているのお前だろ」
「カジマ。嘘や冗談ってのは必ず暴かれて、かつ遺恨を残さないようフォローしてやっと許されるんだ。それで人心を弄んではいけない」
「それはお前の免罪符にはならない」
「カジマと違って、選別はしている」
「……」
しばらくカジマは沈黙していた。
すると突然、俺たちのいる場所と逆方向に走り出す。
「あ、逃げた!」
『煙を焚く』ってわけか。
俺たちは呆れて追う気にもならなかった。
だが、その時である。
「あっっっつちゃー!」
すさまじく雑味のある高音が大きく響く。
その音の主はカジマだった。
どうやら服が燃えているようで、パニックを起こして躍り上がっていた。
「あ、あの辺りって、あの人が前に火を起こしていた場所だよ」
逃げるのに必死でそのことを忘れ、服に引火したのか。
よもや火の後始末すらちゃんとしていなかったとは。
「……助ける?」
気乗りはしないが、放っておくのも寝覚めが悪い。
その程度の情はある。
「助けよう」
「私、超能力者だけど、普通に消火した方が確実で早いと思うの」
「そうか」
俺たちはカジマのもとへ駆け寄った。
その頃、俺はタイナイとコンビニ前にいた。 その近くで、少し前に火事があったらしく、タイナイがその話をしたがるので俺は適当に話を合わせていた。 「そういえば疑問なんだが、...
弟たちは周りの声と動きに追従し、火事の現場へたどり着いた。 しかし、その規模は彼らの期待に応えるような代物ではなく、小さい煙がもくもくとあがっているだけだった。 「燻り...
「やあ、マスダ」 「あ、センセイ。どうも」 センセイとバスで乗り合わせる。 相変わらずセンセイは新聞を読んでいた。 俺は気になって新聞を横から覗く。 「ファイヤーブーム…...
≪ 前 俺たちは一所懸命に火を消そうとするが、カジマが動き回ることもあって上手くいかない。 一体、どうすればいいんだ。 「近くに川があるんだから、そこで消せばいいんじゃ…...