あるときその友人から「小遣い稼ぎしないか」と、そいつの家に招かれた
祖父さんが俺を笑顔で迎えてくれ、そのまま友人と共に三人でちょっと敷居の高い店に行き「小遣い稼ぎ」の説明を受けた
祖父さんは自民党に批判的な著名人の名前、およびそのブログのアドレスやSNSのアカウントなどが羅列された数枚のコピー用紙を俺に見せた
当時としても「自民党はネット工作をしている」などという都市伝説はネットでそれなりに知られていたので、「ついに俺のところにも」と身構えたが、祖父さんの説明はちょっと違った
「このリストの人達のインターネット上の発言を積極的に読んで欲しい。そして、その上で、どういう内容の自民党批判がインターネットで受けているのか、とか、逆にどういう自民党批判がネットで不人気なのか、といったことを、君の自由な判断で何でもいいのでメールで送って欲しい」
「有益な情報を引き出すためならば相手と交流をもってもらっても構わないが、出来る限り最小限に、くれぐれも喧嘩腰になったり、その場を荒らしたりするようなことは慎んで欲しい」
引き受けてくれるのなら小遣い程度ではあるが謝礼を払うと言われ、はいと答えると祖父さんはその場で茶封筒を俺に差し出した(紙幣が一枚入っていた)
送られた内容は祖父さんや秘書の人などが吟味し、それを祖父さんと親しくしている某国会議員の秘書に送る、という流れらしい
そんなこんなで月に数回程度、ホッテントリ入りした自民党叩きの記事を送ったりしていたら、祖父さんから「他の党に対する批判についても、同じ要領で人気、不人気を教えて欲しい」と追加注文があったり、さらにそれからほどなく祖父さんが議員を引退することになって、最初にもらった額の数倍の謝礼を、祖父さん曰く「退職金兼口止め料だよ(笑)」と貰ったりしていたわけだが、見ようによってはあの当時の俺は、今風に言うところの「ネトサポ」というやつだったのかもしれないな