※「『レヴェナント』テーマ解説(1)(イニャリトゥ監督のテーマ編)(http://anond.hatelabo.jp/20160523231652)」の続きです。
『レヴェナント』には、前編で書いた親子愛というテーマのほかに、「資本主義と環境問題」というテーマがあります。ただ、このテーマはイニャリトゥ監督自身のテーマというより、ディカプリオのテーマが混入したものではないかと思い、文書を分けて説明することにしました。
まず監督自身がインタビューでそう言っています。加えて、映画の中にも2つ根拠があります。
1つは、毛皮商人とインディアンとの戦いがサブストーリーとしてあったことです。これは露骨に資本主義と環境問題の対立を描いています。
もう1つは、主人公グラス(ディカプリオ)がバッファローの大群に驚くシーンがあった後に、バッファローの頭蓋骨の山を定期的に夢に見るようになってしまい、悩むことです。この背景にはアメリカで実際に行われたバッファローの掃討作戦(Wikipediaのアメリカバイソンの項目を参照)があります。毛皮商人の一味であったグラスが、バッファローの勇猛さを目の当たりにして、自分が手を貸してきたことの重大さに気が付き、後悔するシーンではないでしょうか。
(加えて、劇中に出てきた「朽ち果てた教会」が、タルコフスキーの『ノスタルジア』からの引用とみて、自然について語ろうとしているのだという見解も見られましたが、そこまで言っていいのか自信がありません)。
筆者の妄想です。
ただ、イニャリトゥ監督はデビュー作『アモーレス・ペロス』から前作『バードマン』まで、環境問題をテーマとして扱ったことがありません。というか監督は親子の問題ばかりをテーマにしていて、そんなに環境問題には興味がなかったと思われます(偏見)。おそらく監督的には「今回は、大自然の中で、親子愛をテーマにして、『デルス・ウザーラ』みたいな映画が撮りたいぞ」ぐらいの気持ちだったのではないでしょうか。
そこにばりばりのエコロジストであるディカプリオが参加したことで、シナリオに影響を与えていったものと思われます。
映像的には、バッファローの大群、頭蓋骨の山、朽ち果てた教会など、感動的・印象的なシーンが増えてよかったと思います。背景に映る雄大な自然にも意味が出てきて、それもよかったかと思います。
ただ、ストーリーはこれによりかなり難解になりました。特にラストシーンにおけるグラスの状況を考えると、①生きる意味(息子・復讐)を相次いで失ったことで精神が崩壊しかかっているが、②自然の偉大さに感銘を受け自らの行いを悔いるエコロジストになっている、という複雑なことになっており、テーマが分かりにくくなっています。
おわり
『レヴェナント』はめちゃくちゃ難解なんですが、ポイントを押さえれば、イニャリトゥ監督の過去の作品と大してテーマは変わんねぇことが分かります。 ポイント1 テーマって何よ...