「できちゃった結婚」をする人は、婚姻届を出しに行く途中で父親になる人が急死した場合について、どう考えているんだろう? っていつも思う。
日本では、婚姻関係にある夫婦の妻から生まれた子は、夫の子であると自動的に推定されるので、生まれながらに法的な両親が保証されている。
しかしそうでない場合は、産んだ女性の法的な子には自動的になるけれど、父親が誰かというのは、別途、届けを出さねばならない。
「僕達に子供ができたよ、婚姻届を出そうね」「じゃあ週末に届けを貰ってこよう」なんて言っている間に、不運にも男性が死んだりしてしまったら、胎児の父親が交際相手の男性であると証明するのは大変である。
ただでさえ体調の悪い妊婦さんが、悲しみにくれながら、せっせと証拠を集めて書類を準備しなくてはならない。
「できちゃった結婚」が、本当に妊娠を望んでいなかったカップルがアクシデントで妊娠し、次善策として結婚をするパターンならば、それは致し方ない。
しかし、妊娠を望んでいるカップルが、紙切れにふたりの関係を縛られたくないだの勇気が出ないだの忙しいだのの理由で妊娠まで入籍を待つのは、余りにも胎児に対して無責任ではないかと思う。
ふたりの間に産まれた子に、両親に何があっても両親を保証する契約書である。
婚姻届が紙切れならば、たとえば住民票も紙切れだから、そう思う人は住民票を出さねばよろしい。
その代わり、その人は住所も公的サービスもなにも法的に保証されない。
「できちゃった結婚」を望んでする人は、それに近い無責任なことを自分の子に押しつけている。
赤ちゃんは何も持たずに、裸で、誰かに頼らずには生きてゆけない状態で産まれてくる。
その責任の法的な所在は、産む母親だけでなく父親にも明確にあったほうがよい、とわたしは思う。
「できちゃった結婚」を望んでする男性は、婚姻届を出しに行く前に自分が急死したららどうなるのかについて、どう考えているんだろう?