2016-02-18

デッサンが狂ってる」という言葉を使う人間はもれなく絵の素人

自分武蔵野美術大学で学んでる者だが、ネット絵描きクラスタで「デッサンが狂ってる」という言葉を聞く度に失笑を禁じえない。

彼らの言うところの意味によると、それは「人物の形のバランスおかしい」ことを指すらしいが、真っ当な美術教育を受けてきた自分からすればあまりにも笑いを誘う言葉使いと言わざるを得ない。そもそも、「形がおかしい」のであれば、素直に「形がおかしい・形が狂っている・比が違う」等と指摘するし、例え横文字を使うのだとしても、そこは「プロポーションおかしい・プロポーションが狂っている」と言う。

美術高校美大予備校現在美大と通じて教育を受けてきたが講師教授は皆こういう言い方をしてきたし、「デッサンが狂ってる」という指導をしている教師をかつて一人も見たことがない。

そもそも「デッサン」が「狂ってる」って何だ?字義通りに解釈するなら、鉛筆木炭を駆使しモチーフ写実的かつ空間的な真実性をもって描出する一連の行為デッサン】が【狂ってる】ということなのだが、それだと指し示す範囲があまりにも広すぎてデッサンの中の「何が」狂ってるのか分からない。仮に何が狂ってるのか指摘するなら、形・明暗・量感・動勢・空間関係など、個々の要素に絞って指摘する。全体を指摘するなら「全体感に気を使え」や「個々の細部ばかりに気を取られるな」と言い、「デッサンの狂いを直せ」など決して言わない。

デッサンが狂ってる」という言葉違和感を覚えず使っているのは、恐らくは独学の素人専門学校卒の半端絵描きのような、ロクに美術教育を受けたことがない連中なのだろう。そんな奴らが顔の見えないネット専門家を気取って大手を振って「デッサンが狂ってる」などという身も蓋もない言葉流行らせ、さもそれが正規美術教育現場でも通用しているかのように吹聴しているのは噴飯ものだ。

まあ彼らがこれからもそういう間違った言葉使いをしていたとして、自分に何か悪影響があるわけでもなく別にどうでもいい。しかしまあ少なくとも自分を含む正規美術界隈の人間からは「可哀想に、物を知らないんだな」と失笑を買い続けることだろう。それでいいんじゃないか。

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