深夜24時まで営業しているこのスーパーはいくつもの顔を持つ。開店時には早朝に目覚め暇を持て余した老人たちが大挙して押し寄せ、その後に特売品目当ての主婦たちが続く。夕方のタイムセールが終わるまでは新鮮な商品も豊富で活気がありまるで概念上の市場のようだ。
22時を過ぎたころには野菜置き場もガラガラになり、大根はしなびた物が2~3本、ネギは跡形もなくなっている。
閉店時間まで1時間を切っても寿司に張られたシールは2割引きのまま。半額になるのは油の酸化した天ぷらとコロッケぐらいなものだ。
とりとめもなく食品を眺める。
この時間から料理すると食べるのが遅くなっちゃうな。白菜と豚肉を煮たかったけれど白菜は売り切れているし豚肉は100グラム230円もするどこだかのブランド豚しかない。これならそこらで食べて帰ってもいいのでは?とは言え牛丼の気分でもないしラーメンは太っちゃいそうだ。やはり何か適当に作るか。いや、作ると遅くなってしまい寝る直前に食べるのは良くない…
なんて思考のループから抜けられないまま豆腐の前に立ち止まる。
豆腐をタンパク質の塊なんて言う人がいるけれど実際のところ豆腐のほとんどは水分だ。
単位重量あたりのタンパク質は豚肉の半分弱、サバなどの3分の1程度しかない。話題の豆腐レシピはいかに豆腐の水分を抜くとうまいか、そんなことばかりに腐心しているように見える。
そんなに水分を抜きたいなら、水切り済み豆腐を売ればいい。体積も重量も小さくなり輸送コストも削れるしおそらくは日持ちも多少マシになるのではないか。クックパッドあたりとコラボすれば意外にそこそこ売れるかもしれない。
昔のようにプラスチックパックの中で水に浮いてはいないけどそれでも豆腐はほとんど水でできている。
シンプルにおかかとしょうゆで冷奴か、キムチと納豆でも乗せてしまうか、家に残った野菜と共に湯豆腐もいいかもしれない。