俺がパニック障害になって、そもそも人が多い街中(といっても地方都市)に住んでること自体、
負荷が高くて田舎者の俺はもうダメなのかもしれんね、みたいな話になった時、母が自分の昔話をしてくれた。多分30年ぐらい前の話。
美大に入るための美術の予備校みたいなところに通うために下宿してたらしい。中野とか言ってたかな?
下宿先から予備校に通うのに、田舎では見たこともないような満員電車に乗って移動するんだけれど、
通いだしてすぐに、電車の中が満員でまったく身動きが取れないのをいいことに、
後ろに立って服の首元から中に手を入れて胸をわしづかみにするタイプの痴漢に遭ったそうだ。
たった一度だったそうだけど、そのショックで下宿先から外に出られなくなり、
予備校から「出席してませんけど?」と親元に連絡が行って親がようやく状況を知って確認、
これはもうここにいても無理だと判断して、たった数ヵ月で上京生活は終わったらしい。
今でこそ、「まあ背は低いけど昔から胸は大きかったし!」と母は笑っていたけれど、
都会で育っていれば「よくあること」「そんなことぐらいで」と言えたかもしれないようなことでも、
田舎育ちの人間は、一発で人生が狂うレベルのダメージを受けることもある、
今の男の人は痴漢冤罪に怯えながら電車に乗るから、それだけで緊張状態になるし、
そういうことを続けてるだけでも心が疲れてしまうアンタみたいな人間がいるのも別に不思議なことじゃない、
だから私はアンタが都会から逃げ帰って来ても責めないよ、そもそも都会に向いてると思えないし、みたいなこと言われてちょっと泣いた。
ちなみに母は女性の社会参加とか権利向上とかそういうのに一家言ある感じにまとまってて、
今までは割と暑苦しいしめんどくさいなぐらいに思って聞き流していたんだけど、そういった経験が原因なのかなと思うと納得がいった、
母に痴漢した奴は死ぬほど後悔するような目に遭えばいいと思うけど、
結果的に母が父と出会ったのは最初目指してた美大を諦めて進学した地方の芸大を出てその街で就職した後だから、
そういう意味ではその時母が痴漢に遭ってなければ、俺はこの世に生まれてなかったかもしれないと思うと、なんか複雑な気分になる。
同時に、ネットにあふれてる痴漢被害とか痴漢冤罪で人生終了とかの情報に触れすぎて何かがマヒしてて、