大学の夏休み、僕は工場でバイトしていた。その時のラインリーダーの女性(50代後半・パート)がかなり難しい人だった。
とにかく細かいことでキレまくる。そこまで言うかよ・・・ってレベルの長々しい罵倒。少し優しいときは幼児にキレるようなバカにしたような口調。
「私に苦労させないでよぉぉぉぉぉ!!!」「ふつーにやれば不良品なんて出ないんだよぉぉぉぉぉぉ!!」「なんなの?!なんなの?!」
こんな感じでしかも甲高い声で顔を真っ赤にして言うのだ。このまま怒り死にしちゃうんじゃないか?この人。と思ったりした。
彼女にキーキー騒がれるの嫌でミスがあっても怖くて誰も申告できなくなっていき、僕らのラインは不良品製造機と化した。
しかしながら彼女は上司(あまり現場を見てない)には従順で愛想が良く、派遣ばかりのこのラインを任せられるんはしっかりしたアンタだけだよ。なんて言われたこともあるようだった。
彼女は従業員をいびって何人も辞めさせていたそうだ(ほとんど女の子)
僕は彼女のこのエピソードを聞いたとき悪人だと思ったし、一緒に働いてからは本当に消えて欲しいもう喋らないで欲しいって思った。
お盆に会った従姉とそのラインリーダーの息子が昔同級生だということが判明した。
従姉「アンタのバイト先に●●っておばちゃんいるだろ」
僕「うん、怖いババアな」
従姉「昔っから変なおばちゃんだったんよー。息子高校入って引きこもっちゃったんだよ。かわいそうだよね。」
正直びっくりした。工場で怒り狂うクソババアからは家庭の匂いなんて一切しないし、僕は想像さえしなかった。
僕はたった一面しか人間を見ないで消えて欲しいとか悪人だと決めつけていた。
彼女も家に帰って息子の部屋に話しかけてたり、いつも息子の行く末を案じて眠れなかったりするかもしれない。
もし僕が引きこもったら母ちゃんはどんなに悲しむだろうか。
彼女も誰かの母ちゃんなのだと認識してから、少しだけ彼女に対して許容範囲が広がったと思う。もっとも8月末までの短期のバイトだったから残り時間はわずかだったが。
あの出来事以来人間を多面的に見ようとするクセがついたと思っている。
今もたまにラインリーダーを思い出す、でも嫌な気持ちにはならない。息子は社会復帰しただろうか。母ちゃんに心配かけんなよって一発教育してやりたいもんだ。
そのババアが変なことばかり言うから、息子が引きこもりになったんじゃないの?