2013-10-04

化粧室の鏡の前で、腰に手を当てて軽く伸びをしたら

シャツにくっきり乳首が浮かぶのが見えた。

十月からの衣替えで久々に取り出した、襟が邪色に染まった長袖を

ゴシゴシ汚れ落としをつけて洗濯機に三回かけて干して、

袖を通したときに、きついなとは思ってたのだ。

ツルツル点の二の腕ラインとか、椿のように花開いたボタンダウンの襟足とか。

だが、どれも似たような感じだったし、着れるからいいやと今週の土曜から

ローテーションを回し始めて、二回目の今日、胸ポチが浮かんでることを知った。

加齢した人間は一日の何処かで肩を回し、背筋を伸ばしたくなるものである

私のような、体重が三桁までカウントダウンを切った化け物ならなおさら

配置転換をして日が浅く、気軽に声をかけてくれる知人が職場にいなかったのは

最悪のタイミングであった。ただでさえ、歳をとった人間にとって、社会とは

海にひっそりと浮かぶ孤島のようなものである。似たものを探すのはただでさえ難しく、

心の架け橋をかけられるような人となると尚更であった。

容姿無頓着のまま、だらしなく歳を取ったとはいえ、これは別である

まだ平均体重有意差内に収まっていた頃の昔から

女性ホルモンが人よりあった私はマイ•サンの長さと引き換えに乳房が発達していた。

休み上半身裸で体操をする習慣(今もあるのか、凄いな……)が

ある学校に通っていた中学時代、ひたすら上半身を鍛えたものである

ボディビルに出場できる歳になる頃には残念にも、もう辞めてしまっていたが、

その頃覚えた大胸筋のリズム体操は今でも出来たりする。

脇でりんごを潰す要領で、ゆっさゆっさと揺らせられる。

その、なんだ、過去話で長くなったが、つまり今でもわりとこの胸周りは

コンプレックスなのだ自分でも久々に思い出したが。

不幸にも、インナーシャツは薄地のメッシュしかない。

木綿で暑い肩紐のあれはないのだ。全部久米田先生が悪い。

そうだ、思い出した、このコンプレックスを前回刺激されたのは

たまたま絶望先生を読んでいて、ビーチク周りが

染み出た汗で浮かんだオタクを描写したときだった。

あの人は人の劣等感を的確に刺激する術を知っている。

小学生時代は、ファッションいじめられっこだったろと思う。

あのぽっちりを浮かべないようにするにはどうすれば良いか

今、上着を羽織ったらおそらく脱水症状で死ぬだろう。

絆創膏を貼るか、いやそれはもっと目立たないか

ワイシャツサイズはこれ以上を探すのは厳しい。

下着を厚くする、あたりがいいのかな、とそう思っている。

……注文した。日曜には届くであろう。

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