カテゴリー 「不滅のあなたへ-感想」 RSS

2021-04-27

[]不滅のあなたへ 三話

狼の神性は各国の民俗学で取りざたされるが、狼の神性のみならず変身奇譚的な要素が取り入れられている。これは主観的視聴者目線では狼は最初から狼として変身していたのであり、さして最新話でも変化がない。しかし話の中に一度入ってみれば、生贄の女の子や槍を持った部族の女の目線ではもう一つの神のように見えたのではないかとはいえ、生贄の彼女は狼に人間と同列の感情で接している)。神性の変身性質化身という表現で語られる。様々な宗教において化身は多くの姿を持つのが通例で、その一形態をより身近なリアリズムを持たせて描いてるのだろう。

不滅~は一話目から民俗学の造詣(というより下調べ)が濃い内容であり、そんな意味民間伝承をふんだんに取り入れたという三話も二話もそれほど違和感はない。仮説でしかないが、神話形成過程を描こうとしているのか、という気がしなくもない。そして、神話とはある意味では人類歴史過程であり、一つの不思議生命体を通して進化全体を代弁し始めているのではないか。つまり神話の根源には実はもっと科学的でDNAじみたものが中心にあるのではないか、あるいはそれは刺激によって信仰とは無関係善悪関係なく取捨選択する存在ではないのか。言ってみれば神話の再解釈だ。現状そんな印象を受ける。

2021-04-19

[]不滅のあなたへ 二話

一話目が主観目線希望のない荒野を映し出したのに対して、二話目は完全に客観目線なので感情移入より社会派を目指したのかな、という冷静な目線に立ち戻ってしまう。要するに突き放した目線で見てしまう。内容もナショジオなどで取り沙汰されたクマリの儀式を模したもので、作中の価値観は極めて現代的な「自由」を標榜したもの

人身御供などの題材は普通洗脳下における人物感情の無情さ、無機質さ、怖さが必ず絡んでくる。あるいは逆に、そうまでして守りたい信心というあらゆる意味多角的文化を捉えなければならないものでもある。今回はそうした重みのある題材を軽々しく作品にしてしまった。こうしたものの取り扱いには現地の倫理観という優先すべき事項も存在するわけで、外人であるほぼ西洋化した日本人感覚で語ることは、本来まり歓迎すべきことではないように思える。タンクトップの女も民族衣装的ではなく、歴史を正視するノイズになっている。

一方(原作未読だが)二話以降は感情の伴わない神が送り出した物体少女との不思議交流がメインとなるわけで、感情が伴わないもの感情豊かなもの、死なないものと確実に死にゆものの対比が描かれる。そう考えると歴史的に行われる人身御供巫女儀式は全くメインではなく、視聴者が感じる旅情感と作品のメインモチーフである「人であることとは」という現時点の問いかけに全力で振り切っていると言い換えたほうが適切なのかもしれない。それならなぜ重たい背景を持つクマリをあからさまに題材にしたのかという疑問点は残るが。

 
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