はてなキーワード: 小倉山とは
熱海での土砂災害について、山間部に埋められた残土が問題になっている。
熱海の件とはまったく関係ない話だが山間部の建設残土と聞いて「小倉山トンネル」を思い出したのでちょっと書いておく。
有名な話だし調べればもっと詳しくわかることなので興味があったら調べてみてほしい。
圏央道(さがみ縦貫道路)の高尾IC~愛川IC間には、小倉山トンネルという比較的長いトンネルがひとつある。
このトンネル、実は、当初の計画では前後ふたつのトンネルになるはずだった。
ひとつ目の山を抜けて谷に顔を出し、谷は橋を架けて渡り、ふたつ目の山にもぐるという構造になる計画だったのだ。
余談だが、世の中にはこのようになぜか途中で一瞬だけ地上に顔を出すトンネルがちょいちょいある。
トンネルは距離で規格が定められていて、ある一定の距離を超すごとに仕様(満たさなければいけない建築基準)が厳しくなり、そのぶん建設コストが上がる。
なので、ルートを調整して一度地上に出し、上位の規格に達しないようにしてうまくコスト削減する手法がとられることがある。
小倉山トンネルがそれを意図した分割だったのか単に効率的なルートを引いた結果そうなったのかどちらかはわからないが、ともかく谷を挟んで前後に二分割するルートは認可された。
ところが、いよいよ測量という段になって衝撃の事実が判明する。
あるはずの谷がない。
地形図では橋を架けられるほどの谷なのに、現地に足を運んだらかなり上まで地面だったのだ。
長年に渡る建築残土の不法投棄によって、谷が埋まってしまっていたのである。
どうしよう。
残土の谷にそのままトンネルを突っ込む案、残土を切り拓いて道路を通す案などが検討されたが、強固な山体地盤とは異なり残土の谷は不安定な人工の盛土なので地盤改良が不可欠で、それには長い工期の延長と多額のコストが必要だった。
結局、計画は残土の谷を「下」に迂回して一本のトンネルを通す設計に変更された。
結果、小倉山トンネルは(どっち向きに走っても)トンネルの前半が下り坂で後半が上り坂というV字型の苦しい設計のトンネルになった。ここを走る機会があったら観察してみてほしい。見るからにおかしな風景と感じると思う。その裏にはこんな残念な事実があったのだ。
ちなみにトンネル内での勾配変化はよくあることで、雁坂トンネルは「への字型」の勾配変化があるし、首都高の飛鳥山トンネルに至ってはウェーブ状の起伏があって空いている時間帯に走ると楽しい。