「美味い」はあるよ。
「高いな」はあるよ。
でも一番強いのは「悔しい」なの。
庶民が食べる1食1500円ぐらいのちょっと豪華なランチとは味が全然違うの。
作っている側の技術もだけど、食材の鮮度っていうかランクがぜんぜん変わる。
自分たちが普段食べているものが型落ち品なんだと否応なしに突きつけてくる。
特に高級食材なんかが顕著で、たとえばイクラってスーパーの海鮮丼や回転する寿司にだってモリっと乗っかっているけどアレと味が全然違う。
つーかあのイクラ合成だったのかなってぐらい味の濃厚さが違うの。
でも確かに同じ系統の味で、別物ってわけじゃなくてただ単純にレベルが違う。
近所の小学生が日曜日にやってる野球で投げられるボールもプロのボールもどっちもそれなりに速い球だけどレベルが全く違うような。
本当に美味い食べ物って「本物」って感じが強いんだよね。
美味いか不味いかを超えて「正しい」とか「理想的」とかの領域に入り込んでくる。
それが頭の中にあるそれぞれの「牛肉」とか「カキ」とかの領域に突っ込んできて、それまでそこにあった「紛い物」を蹴り飛ばしていくわけ。
毎日食べていた食事が如何に貧相だったか、味覚をハックする技術と空腹という調味料に支えられていただけの「美味い感」で誤魔化していただけの空虚な食事だったかを突きつけてくる。
年収が億単位の人は毎日のように「本物」を食べて、その上で「時間がないから」といった理由で「偽物」を妥協で口に入れることもあるわけ。
でもこっちは逆で、毎日「偽物」を食べ続けて、ハレのときにだけ「本物」をやっと口にするの。
その状態が現実に確かに起きていて、自分たちは奴隷の側だってのを舌と能が流れてくる「本物マジうめぇ~~~」の電流がヒシヒシと証明を繰り返すの。
しんどすぎねえか?
この世界は