2021-04-08

前方のポメラニアンが俺を気にかけてくれた

心優しきポメラニアンに、感謝の意を込めて──。

犬が好きだ。

動物全般好きだが、特に好きなのは犬だ。ロングコートチワワも好きだしスムースチワワも好きで、子供の頃はロングコートチワワはなちゃんと一緒に生活させていただいていた。俺は犬より立場が低かったのではなちゃんには見下されていたが、気まぐれに俺を踏んでくれるはなちゃんの冷んやりとした小さな肉球がただただ愛しかった。

今は仕事と金関係で犬と生活させていただくことは諦めているが、たまに無性に犬が恋しくなる。ので、そういう時は保護犬カフェで犬欲を満たしている。おやつ課金をすると犬にまみれることが出来るので、メンタルが死にそうになったとき保護犬カフェおやつ課金することをオススメする。

そんな俺の楽しみの一つに、散歩中の犬とのエンカウントがある。勿論散歩中の犬と犬に連れられる人間に自ら声をかけたりなんてしない。散歩を楽しむ犬の邪魔をしたくないし、犬に連れられている人間に俺の相手をさせるのは迷惑だと思っているからだ。偶然エンカウントできた散歩中の犬を生暖かく見守る、それだけでいい。チャッチャッと小さな足音を立てて歩く犬の姿は何とも尊く、揺れる尻尾はこの上なく愛おしい。楽しそうに人間を連れて歩く犬、渋々と人間に付き合い歩く犬、俺という個を認識して吠えてくれる犬、同じ犬は一匹といないので出会いは正に一期一会

そのポメラニアン出会ったのはある冬の日のことだった。

低賃金労働を終えてヘロヘロになりながら家に帰る途中、気が付くと俺の前を神々しいほどに真っ白なポメラニアンが歩いていた。ふわふわとした綿毛のような愛くるしいフォルムに、貴族のような気高さすら感じる堂々とした存在がそこにあった。完成された美とはこのことを言うのだろうか。

その美しいポメラニアンが、俺という卑しい存在認識してくれた。時折俺に視線をくれながら前に進む。俺はその後を付いていく(家の方向が同じだった)。「そこの人間よ、犬が好きなんだろう?」「犬好きだろう?撫でたいだろう?構いたいだろう?」とでも言わんばかりに振り返ってくれるポメラニアンに俺はもうメロメロだった。何て愛らしさだ。これはもう──ファンサだ。

俺という存在認識し、目線をくれた名も知らぬポメラニアンよ。あなたという存在に俺の疲れ切った精神がどれだけ救われたかあなたは知らないだろう。きっとあなた出会うために、あなたの姿を見るために、俺は今日仕事に行って帰ってきたのだ。

ポメラニアンは俺の家の前を通り過ぎていった。俺はそのまま声もかけずに家に帰ったが、そのポメラニアンのことが今でも忘れられない。

どうかあのポメラニアンに、永遠幸せが訪れますように──。

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