今は無きケンタッキーの脇を曲がり、狭い入り口を抜け、階段を上がれば御目当ての同人誌コーナーだった。
オタクになりたてで、イベントにも行ったことの少ない私には宝の山だった。
平台で新刊を見て、棚までチェックして、いくらでも時間を潰せた。
まだ池袋にメロンブックスはなく、男性向け同人誌と言えばとらのあなだった。
アニメイトは女性が多く、なんだかキラキラしていて居心地が悪かった。適度なアングラ感と男性向けフロアの空気が好きだった。
気が付いたら、店舗はグリーン通り沿いのビルのフロアに移転していた。面積が狭くなってしまったのは悲しかったが、それでもまだ男性向け商材の品揃えは良かったように思う。
「今日入荷だと聞いたのですが…」
「あ、その本まだ着てなくて。お昼頃だと思うんですけど」
お昼頃に再訪したとき
「本、入荷しましたよ!」と声を掛けてもらったことを、今でも覚えている。
しばらくして、男性向けのフロアはさらに縮小した。一般向け商業と一般向け同人誌と成人向け商材でワンフロアになった。
不自由はそれでも少なかったように思う。欲しい本は通販も利用していたし、棚のザッピングは物足りなくなったけれど、メロンブックスと2店舗回れば満足だった。
さらに移転した。女性向けジャンルの店舗があったサンシャイン通りの店舗と位置が入れ替わった形だった。
狭い。けれども、その頃にはもう同人誌は専売以外はメロンブックスで購入していたし、とらのあなへは商業漫画の特典を主な目当てとしていたから。
さらに規模が縮小した。
グリーン通りのフロアから撤退してサンシャイン通りの2フロアに縮小したのだ。
前の段階で、とらのあなで同人誌を買うならほぼ通販と化してしたので、寂しいは寂しいけれど池袋では仕方がないことと思った。
商業の新刊はだいたい発売日の近いうちに行けば手に入ったから。
ただ、フロアは女性向けも多く、肩身は狭くなった。目当ての物を手に入れたら早々に退散するようなった。
そして、今回の池袋店の男性向け商材からの完全撤退である。衝撃だった。正直、とらのあなの実店舗がどんどん閉店している間も、まさか池袋は…という気持ちだった。
辛くて仕方がないので、今までの池袋とらのあなの思い出を振り返った。記憶違いもあると思うが。
池袋のゲーマーズはデジ子が「あばよ!池袋!」みたいな捨て台詞を残して一度撤退したが、復活を果たした。今はまたよく分からんものになってしまったけど。