高校の頃からそんな感じだけど、変な人だなと思いながらも律儀で可愛いところもあったので社会人になってからも時々お茶したりうちに呼んだりしていた。
1年前、彼女はちょうど難しい試験に通って、新しい仕事を始めたところだった。
お祝いしようと言ったのは私だった。
私は銀座のイタリアンを予約して、食事の前にサプライズで三越の地下で口紅でも買ってあげようと思っていた。
その日は電車が止まるほどではなかったものの、雨風吹き荒れる悪天候だった。
私は彼女がいつもどおり遅刻してくることを見越してギリギリまで有楽町のマックで時間を潰していた。
遅れるという連絡がないのでこれは時間通りに来られる感じだろうなと思って待ち合わせ10分前に店を出て、ごうごうと風が唸る中を待ち合わせ場所のライオン像に向かって歩き出した。
彼女から「残業で30分遅れそう」と連絡が来たのは待ち合わせ6分前だった。ごめんも何も無かった。
私は濡れて凍えながらカチンときてしまって咄嗟に「連絡が遅いわ!!!」と送った。
そうしたら「わかりました。ではもうやめましょう」と返事が来た。
私は何もかもバカバカしくなってびしょ濡れになりながらそのまま家に帰った。
帰りながらひとことだけLINEしたけど、未だに既読もつかない。
たぶん彼女は新しい職場に馴染むのに毎日必死で心の余裕がなかったんだろう。
遅刻が確定した段階で人目を忍んでこっそりLINEする、みたいな器用なことができるほど慣れてもいなかったんだろう。
もしくは必死で仕事をしていて定時を過ぎてることに気づかなかったとか。
正直、その日の約束も、疲れてるしめんどくさいな、ありがた迷惑だな、と思っていたかもしれない。
「やめましょう」とか言っても私がいつもみたいに「そんなこと言ってる暇あるならさっさと来い!!おごらせるぞ!!」とか言ってくれることを期待してたかもしれない。
わざわざ彼女のご機嫌をとらなくたって、私には他にも友達がいるし。
それでもう1年、彼女と連絡をとっていない。
私と彼女の両方が参加している高校友人のLINEグループも、私がいる手前きまずいのか、彼女はまったく発言しなくなったし集まりにも来なくなった。
それでもしかしたら高校関係の友人は全員切れてしまったかもしれない。
私があのとき許して彼女とそのまま会っていたらこんなことにはならなかったかもしれない。
いや、じつは彼女は私の知らないところでたくさんの友達と仲良くやっていて全て思い過ごしなのかもしれない。
実際のところは何も分からない。
長年の付き合いってたったひとことでこんなふうに切れちゃうんだな、というのと、
ある程度法的に縛られる家族や夫婦と違い、こんなふうにいつでも好きに切れる友人関係ってなんて危ういんだろう、
というのが今回の学びで、
私はもうあなたと会いたくないけど、どうか毎日元気で楽しく暮らしててほしい、
というのが今の正直な気持ち。