PowerPointの図形にグラデーションをどうつけたらいいですかと、持田さんが訊いてきたので彼女の席まで行った。机にはノートパソコンが開かれていて、画面にはとぐろを巻いたうんこが表示されていた。
ここなんですけど、と持田さんは画面上のうんこに指で触れる。段々になっているところにグラデーションを入れて、うんこのきれいな巻き具合を表現したいです。
彼女の席に座って、PowerPointで描いたうんこに垂直方向のグラデーションを設定する。下側の黄土色から上側のこげ茶色に向かうやつだ。持田さんは「おー、それっぽい」といって、かすかに手を叩く。
なんとなくそんな気がしたので、ランチ営業をやっている居酒屋に持田さんを誘って入り、二人ともじゃんぎ丼を注文した。
ほうじ茶をすすりながら、あのうんこは何に使うんですかと聞いてみる。
あれは提案資料のイラストですね、と持田さんもお茶を飲みながら答える。
「ほら、私、もう今月で契約終わりなんで。引き継ぎも終わったし、やることって特にないんですよね」
売り上げ回復の見通しが立たず、会社では契約社員の人の契約を更新しないことにしたらしい。普段一緒に働いていてあまり意識したことはなかったけど、そういえば持田さんは契約社員だった。
「有給なんてあってないようなものだったし。やめるってわかっていて、毎日会社に来て、何にもすることなくて座ってるのって、けっこうきついですよ?」
湯呑みの向こうから持田さんはこちらをちらりと見た。じゃんぎ丼はまだ来ない。
「増田さんはこうやってご飯に誘ってくれたりするからいいけど、他の人たちはあれ何なんですかね? 私がリストラ?されるってわかった途端に態度がぎこちなくなって、最近は話しかけてもこないですし。私はえんがちょ? うんこはそっちだろって思うんですけどね」
ようやくじゃんぎ丼が来て、二人とも食べ始めたので、話はそこでいったん終わった。この店のやつは、甘辛く煮たから揚げの上にフライドガーリックをかけてクリスピー感を増してあるのが好きだ。
食べながら、このあと会社に戻って自分は持田さんのうんこの完成を手伝うのだろうか、他の人に見られたらどう思われるだろうか、などとさもしい考えが浮かんだが、あとで考えようと思った。
店を出ようとしてテーブルから伝票を取ったとき、持田さんは次の仕事が決まっていないだろうなと思った。が、突然おごってあげるのもなんだか不自然で失礼な気もしたので、会計は別々にした。
お前それしか書けねーの?
凝った図とか、 背景が写真(に自己啓発的な文句を高橋メソッド)とか、 ギュウギュウ詰め(視力が普通でも後ろの人が読めない)とか、 そういうプレゼンは大抵クソですね 意味のあ...