私は大学受験で二浪した。失敗したことを失敗と素直に受け止められなかったから、こうなった。結局得られたものは一つもなくて、二年の時と可能性、健康な身体と思考を失っただけだった。二年目はとくに酷かった。勉強なんて遠くに行ってしまって、わずかなコンビニバイトを除けば、そこにあるのは静かな絶望だけだった。“静かな絶望”と書いたが、何も詩的な耽美あるわけではなく、Youtubeの本当にくだらない動画と、過度な自慰行為と、コンビニの廃棄弁当と、周囲からの痛い視線、嘲笑、侮辱、偏見があった。怠惰に怠惰を重ね、惰眠を貪っているだけなのに、自分には何かあるはずだと、救いのないことを心のどこかに置いて、何もせずに過ごした。
ここまで来るとと、おちおち眠ることさえできない。ある時、急に、胸が締め付けられ、呼吸がうまくできなくなって、身体中の神経が痛み出し、何も吐くことのできない嗚咽と、どす黒い鉛を頭の中に詰め込んだような頭痛が同時に訪れる。堪らなく怖くなって目を閉じると、まぶたのうちの仄暗い深淵から、黒い人魚のような、おどろおどろしい悪魔の幻覚が姿を見せる。その無数の手が伸びて私を闇の底へと引きずり込もうとする。堪らない不安と寒さに凍えながら、吹き飛ばされそうになりながら、ありもしない幻覚と戦い、二時間ぐらいすると呼吸が戻ってくる。支離滅裂、荒唐無稽に思われるかもしれないが、たしかに私は一年間こうして苦しんだ。自殺した方がよっぽどマシだと何度も思った。
今はなんとかやっている。小さな仕事を与えてもらって(というよりはまだまだ教育期間だが)、恥ずかしい、情けない思いをすることも多々あるが、周囲の支えでなんとか立つことができた。この忌まわしい記憶はいつまで私を苦しめるだろうか。それとも一生亡霊のようについて廻って私を苦しめ続けるのだろうか。一方で、やれやれ、もうどうでいいことじゃないかと思う時がある。だとしたら、最初から苦しむ意味なんてどこにもなかった。