2070年。
ほかの道府県が「2020年にちょっと流行ったしょぼいウイルス」のことなど忘れ去り平穏な日常を送るなか、東京だけは依然アラート態勢下にあった。
当然、東京への出入りは厳しく監視される。外部者が都内に入るには14日間の隔離期間が必要で、感染を抑えるため都内での行動は48時間以内に限定され、それを超えたものは強制的に"都民"となる。刻印を押された"都民"が外部に出ることは許されない。血液に染み付いたウイルスはどんな手段を用いても除去できない(とされている)からである。
広々とした空間で楽しく三密の日常を送る都外者は、時折漏れ聞こえる密にして疎なる都内の悲惨極まりない噂に憐憫と恐怖を覚える。
そんな世界で、唯一都内からの持ち出しが制限されていない物品こそが「東京あらーと饅頭」である。他のあらゆる東京土産が汚染により規制される中、アルコールと次亜塩素酸で作られたこの饅頭だけはしぶとく生き残った。
濃厚な酒気と次亜塩素酸の痺れる風味が魅力でリピーターも多いこの商品は、死都・東京のもつ唯一の外貨獲得手段だという。
レインボーブリッジは今日も赤い。2040年に完成した保護皮膜は東京を永遠の夜に閉じ込めた。終わらない夜の街が病毒を培養し、狭い東京じゅうに撒き散らす。新たな感染者は連日100万人越え。都民の間では単感染など相手にされず、最低でも五重感染はしないと病院に行けないという話だ。
死が循環する暗い街で生まれた透明な饅頭を透かして太陽をみると、なんだか生きているという感じがする。ありがとう東京、僕らの首都。
おれたちは都民じゃない!日本人だ!
その頃には東京一極集中も進んでるだろうから、国民の半分くらい都内在住だろうね 国民の半分が死都で蠱毒に揉まれてる国って考えただけで絶望的 ある意味快感
都民、あなたは陰性ですか?
そろそろ発売してほしいなぁ