○「最近くだらない作品が多いのは、辛口の批評が少ないからだ」などという事は無い。単純に「(言うところの)くだらない作品のほうが売れるから」に他ならない。どんなに辛口批評が出回ってても、売れるのなら業界はそれをよしとするし、評価自体は高くても売れないと判断すれば業界は売らない。また仮に批評が功をそうしたとして、「くだらない作品が減ったから、くだらなくない作品が増える」とは限らない。どちらも売れるならどちらも売るし、どちらも売れないならどちらも売らない
○またそのうち、今の市場の作風が飽きられ硬派な作品が日の目を見る時代が来るかもしれないが、それはそういう作品に関わった(あるいはこだわった)制作者やそれを支えたスポンサーの功績であり「批評がそれに少しでも貢献した」等という事はありえない
○辛口批評をする人々はたいてい理論派で自分の批評の正しさを疑わない。しかし、そんな辛口批評の大体は、料理に例えると「カレーとハンバーグとパスタはあんなに美味しいんだから、全部混ぜ合わせれば美味しい物が作れるのに、何でしないんだろう」という素人意見程度の物でしか無い。殆どの作品には、ほんのわずかでも良い点があるはずで、そういったものも含めた全体的なバランスを見ずにその作品の悪いところだけを叩くような批評は、所詮その程度の物でしかない。辛口を自称する人々は、作品をべた褒めする人々をけなす傾向にあるが、見る人が見ればどちらも同じ種類の存在でしかない
○(辛口に限らず)批評が制作者の制作活動に直接役立っている。なんて事はあまりない。少なくとも「(自分から批評をお待ちしておりますと明言しているわけではない、あるいは、そういう場に書いているわけでもない)制作者が批評を見て自分の作品の欠点を把握して自分の作品に反映させる」なんて事はまずない。普段から意見を求めていないのにインタビューでそう言っている制作者がいたとしたらそれはファンへのリップサービスである。多くの制作者は批評を参考にするどころか見る事すらしない。なぜならメンタルをやられるから。最初は批評上等としている制作者も殆どが最終的に見なくなる
○「批評が無いから業界がダメになるんだ」と思っているのなら、大きな勘違いをしている。批評、というか「作品の評価役」は存在する。それはスタッフの中にいたり、あるいは直接指名で作品について外部の立場から意見を言ったりする。その枠組みに入っていない人は、つまり全体から見てその程度の存在でしかなく、そんな人のする批評もその程度の批評でしかない
○「良い作品を作るには辛口の意見も必要なんだ」というのはその通りだが、「褒める人間が多いから自分はけなしておこう」等という状況は、前述の通り著しくバランスを損なっている。一人の人間がきちんとバランスを取って一つの作品を『評価』するか、せめて褒める人と討論をする形式になっていないと価値はない。(ただし、仮にそうやって価値が出たとしても前述の通りそれが参照される事は基本無い)