2020-01-31

まどろむ昼下がり、春休み

試験期間が終わり、大学生の俺は目覚まし時計も鳴らさず起きたい時にすっくとベッドから降りた。

今日は昼前に目が覚め、麻婆豆腐ブランチとして食べた。寝起きの舌に麻婆豆腐の辛味は感じづらく、ご飯と一緒にゆっくりと食べた。食べ終わる時にはもう14時でもう1日がこんなに終わったのかと驚きつつ、冷蔵庫からアイスバーを取り出して食べた。最近クッキーバニラが入っているのがお気に入りだ。

お昼にアイスバーを食べたのは、何ヶ月ぶりだろう。大学に通っていた時期であれば、今頃3限目の講義を受けている頃だ。学食蕎麦を急いで啜り、講義室でノートを広げる。だいたい10分過ぎたあたりで眠くなって、話が入ってこなくなる。思考が石のように固まり意思アイスバーのように溶けて形を保てなくなる。だいたいの日はそうなることを察知し、おぼつく手でスマホから録音させて事なきを得る。それでも、録音で講義は取り戻せない。俺は血糖値の上がり下がりで意思を、時間を、講義内容を、失ってしまうのだった。

アイスバーを食べ終わる。もはや持ちての木の棒の味しかしないと思いつつ、それを咥えたまま窓の外を見る。空は青く、雲はどこかへ行ってしまう。俺のクッキー・アンド・クリームもどこかにいってしまった。

なけなしの力を込めコタツから這い上がり、台所ゴミ箱アイスの棒を捨てる。時間はとっくに15時を回っている。

自室に戻りカバンを漁る。試験最終日、俺は呼吸の浅くなった体を引きずりながら図書館で思い思いの小説を借りた。返却日は4月○日と言われた。今は長期貸出期間らしい。俺は図書館の図らいに感謝した。

エアコンを付ける。カバンから幾つかの小説を見つけ、そのうちの一つを取り出した。長い深呼吸をしながら、椅子に深々と座り、上から毛布を掛けた。そして文庫本サイズの本を開いた。読み進めるも、話がはいってこなかった。俺は同じ行を複数回読み、あるときは声に出し、ある時は人物と同じ仕草をして、読み進めた。それでも、どんどん話が入ってこなくなった。

あぁまた君か。そう気付いたときには目を閉じていて、充電中のロボットのように頭をだらんと垂らした。しばらくそうやって動かないうちに正気を取り戻した。まぁ春休みくらいは、時間を多少失おうとも、気にはならない。でもこの眠気、血糖値上下に振り回されない日が来るのか、俺には分からなかった。それに、あいつに振り回されて眠りに落ちるとき、変な幸福感に襲われるとき、俺はどうしたいのかわからなくなる。そんなことを考えていると、決まって陽はスルスルと落ちていくのだった。

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