岬に誰が 早く飛べるか賭けてみて
吸ってたあとで 身震いしてたら
朝まで笑っていたね
ぼくが一番 不気味だって言ったね
DRUG LACE 2019
DRUG LACE 2019
白い細いパイプ うなるようにすする
肺臓深く 吸い込んでみる
テレビ画面が切り替わり、曲が途中で中断される。
番組を熱心に観ていたウサクは、リモコンの主に睨みを利かせた。
視線の先にいたのは俺の弟だ。
「古臭いとはなんだ。この歌の偉大さが分からないのか。今よりも無秩序な、ドラッグの定義も取り締まりも甘かった時代、社会の様相とドラッグは一つの象徴であり、その激動で生きていく人々の葛藤と渇望が……」
こうなるとウサクの話は長いし、疲れる。
それはここにいる皆が分かっていたため、俺たちはすぐさま二人の間に入った。
「ウサク、歴史の大切さは分かるが、年末の音楽特番で省みる必要はないだろう」
「弟くんも、チャンネル替えるなら断りを入れたほうがいい」
「でも俺たちの部屋にあるテレビだよ」
「だったら長男の俺には少なくとも何か言うべきだろう。そもそもテレビだって俺たちが買ったわけじゃないし、自分たちの部屋にあるってだけだ」
だが、正直なところ俺たちもチャンネルを替えようと思い始めていた。
仲間たちで寄り集まっても、このまま音楽を垂れ流していたのでは全滅は免れない。
「よし、じゃあ二人の意見を尊重して、折衷案のドキュメンタリー番組を観よう」
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