2019-12-31

[] #82-1「2019年ドラッグレース

2019年ドラッグレース

歌:小滝読二 作詞作曲小滝読二、梅本


あの日 気球勝負したのさ

岬に誰が 早く飛べるか賭けてみて

吸ってたあとで 身震いしてたら

朝まで笑っていたね

意味不明なことを 喋ってるとき

ぼくが一番 不気味だって言ったね

痛みに丁度いいものから

合法からと笑って

DRUG LACE 2019

DRUG LACE 2019

白い細いパイプ うなるようにすする

肺臓深く 吸い込んでみる

意識だけ変わり 未来はどこにある


テレビ画面が切り替わり、曲が途中で中断される。

「おい、チャンネルを替えたのは貴様か」

番組を熱心に観ていたウサクは、リモコンの主に睨みを利かせた。

視線の先にいたのは俺の弟だ。

「こんな古臭い音楽なんて聴きたくないよ」

「古臭いとはなんだ。この歌の偉大さが分からないのか。今よりも無秩序な、ドラッグ定義も取り締まりも甘かった時代社会様相ドラッグは一つの象徴であり、その激動で生きていく人々の葛藤と渇望が……」

こうなるとウサクの話は長いし、疲れる。

それはここにいる皆が分かっていたため、俺たちはすぐさま二人の間に入った。

「ウサク、歴史の大切さは分かるが、年末音楽特番省みる必要はないだろう」

「弟くんも、チャンネル替えるなら断りを入れたほうがいい」

「でも俺たちの部屋にあるテレビだよ」

「だったら長男の俺には少なくとも何か言うべきだろう。そもそもテレビだって俺たちが買ったわけじゃないし、自分たちの部屋にあるってだけだ」

だが、正直なところ俺たちもチャンネルを替えようと思い始めていた。

このままじゃ日の出まで起きていられる自信がなかったからだ。

仲間たちで寄り集まっても、このまま音楽を垂れ流していたのでは全滅は免れない。

「よし、じゃあ二人の意見尊重して、折衷案のドキュメンタリー番組を観よう」

「何をどう尊重して、折衷した結果なんだ?」

次 ≫
記事への反応 -

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん