「我々もそうだが、この国の人間はほとんどが信仰心を持っていない」
「そりゃあ、そうだろ。現代人の不平不満を神様に解決してもらおうなんてのは時代錯誤だ」
昔の偉い人は「神は死んだ」なんて言っていたらしいが、俺たちから言わせれば、そもそも生きていたかどうかすら怪しい。
『三種の神器』だとか言うのもあるが、あれだって世代ごとにコロコロ変わって安定しないだろう?
「人々の信仰心が薄れるのは、技術や経済が発展した国では珍しくない。資本主義の晩期は、特にそれが顕著だ」
けれども、それが何で俺たちと似ているって話になるのかが分からない。
生活教にも信者がいるらしいが、あれだって大半が面白半分ネタ半分でやっているだけだ。
「不思議だと思ってな。そんな我々が、こうして初詣といって神社に参拝するのはなぜだろう、と」
ウサクの言葉に俺たちはドキリとした。
確かに、そう言われてみると変な話だ。
そんな非合理な慣習を、俺たちは何の疑問もなく受け入れている。
「初詣に限った話ではない。夏祭りなどでは神社などの宗教施設を使い、自治体含めて多くの人間がそれを後援している」
宗教の自由があるとはいえ、いつだって“自由”はリソースとの相談だ。
俺たちはそのリソースを宗教的なことに割いているって意識が今までなかった。
「なるほどな、ある意味で俺たちは宗教にどっぷり浸かってるわけか」
「なーんか……変な感じ」
俺たちは軽く身震いした。
上手くいえないが、ゲーム画面が暗転したら自分の顔が映った時みたいな感覚だ。
「改めて考えてみると、何とも奇妙な社会だな」
ここにカジマやタイナイがいたら、陰謀論だとかに繋げるだろうな。
「ん~、確かに。アニメや漫画とかでも、登場人物たちが神社とか行くシーン多いよなあ。葬儀も大抵は仏式だし」
そう思っていたら、誰かが藪から棒に喋りだした。
バイト仲間のオサカだ。
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≪ 前 俺たちはコンビニに辿り着くと、粛々と目ぼしいものを買い物カゴに放り込む。 あまり長居するのは危険だ。 「手ぶらで冷やかしに入った人間が、数分後には強盗になっていた...
≪ 前 「そういえば酒で思い出したが、マスダたちの家では今年“アレ”は出てくるのか?」 「“アレ”ってなんだよ?」 「この時期に“アレ”といえば、“アレ”しかないだろ。ほ...
≪ 前 こうして買出し組は1位の俺と弟、そして2位のウサクとなった。 「初詣の出店で色々食べたいから、軽いものだけでいいよ」 「ああ、分かった」 「あ、そうだ。オイラのカード...
≪ 前 人数を合わせるため、俺たち兄弟は一蓮托生ということにした。 「じゃあ、マスダが4位の場合は弟くんも4位ってことか」 「そうだ。3位以上は買出し組になる」 「え、それで...
≪ 前 とはいえ、全員でこの場を離れるわけにはいかない。 誰も居ない予約席なんて自由席と同じだからだ。 何らかの自治体がどこからともなく駆けつけてきて、あれよあれよという...
≪ 前 この町で日の出を見たいなら、港近くの展望台が手軽かつ最適な場所だ。 いや、“だった”というべきか。 なにせ、みんな考えることは同じだ。 そして生憎、展望台に“みん...
≪ 前 法律ギリギリの苛酷な労働環境、杜撰なスケージュル管理などを赤裸々に書いた暴露本は物議を醸しました。 田尾:以前から意識にズレは感じていました。『Mの活劇』は皆で作...
≪ 前 竹島:あの頃は人間扱いしてくれなかった。エベレストに登らされたとき、この仕事を請けたのは失敗だと思いました。 この時の『Mの活劇』の撮影について、Mのスタントであ...
「2019年のドラッグレース」 歌:小滝読二 作詞・作曲:小滝読二、梅本衰 あの日 気球で勝負したのさ 岬に誰が 早く飛べるか賭けてみて 吸ってたあとで 身震いしてたら 朝ま...
≪ 前 「お前も初詣か?」 「ついでついで。カンって人に出店の手伝いに駆り出されてさ」 オサカが視線を泳がすと、その先にはカン先輩がいた。 あの人ならいるだろうとは思った...