病院で匙を投げられたスポーツ選手の腰痛から、競技特有の故障までいろいろ見させてもらいそれなりに成果を出していたので
今でも記憶にあるのが話題の少年野球の子どもさん。その話をしようと思う。
その子は小6のピッチャーだった。肘を壊してしまい病院で埒が明かなかったので
こちらにお父さんが連れてきたという経緯だった。
初見で「これは・・・多分無理だな・・・」というのが自分の見立てというか、素人が見ても「やばいな」という形になっていて
人って無理して投げつつけるとこんなんになるんだ、と思った。「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ」を地で行く感じ。
基本的に「肘が壊れた」というのはいろんなパターンがあるけど、だいたい「投げると痛い」
でもこの子は違った。肘が完全に変形していた。
聞き取りしてみたら机に肘を置いて字を書くのもしんどいといってたけどそりゃそうだ。
お父さんは見た目は亀田の親父みたいな感じで、監督も兼任していてこちらの施術中もじっと見張るように見ていた。
こういうとき、いろんな方法があるのだけど、まずは子どもさんを安心させて施術し、施術後に保護者と話をする。
術後、お父さんに少年がいないところで「このままでは治らない、現状でもかなり厳しい。成長期前にこれならこれから先どうなるかわからない。
なので自分から言えることは野球をやめた方がいい。だけど事情はあると思うので、それが無理ならしばらく練習させないのが良い」と伝えた。
するとお父さんは「それはできない。週末は練習試合がある」と答えた。
百歩譲って甲子園だから、はわかるけど甲子園どころか「練習試合」。
それでこの子の肘をさらに酷使させようとしている。練習試合でこれなら甲子園だったらなおさらだろう。
その後も俺が施術するとしばらくは痛みがとれるとのことで、俺が辞めるまでは来てくれていたけど
正直微妙だった。明らかに肘の形は悪なってきてたし、俺が一度の施術で治せる量を超える練習をしてくるので悪化する。やめたほうが良い
と言っても理解はしてもらえなかった。