モヤったのは、プリキュアの1人である天宮えれなのお父さん(メキシコ人)が、他のプリキュアの娘たちをハグした場面だ。
こうした場面は、いわゆる異文化の人を書くときに使われがちなものであり、多くのアニメでハグによる挨拶が描かれているのはわかっている。
だが、今作のプリキュアは多様性をコンセプトにしており、これまで「異文化とどのように関わるか」という問題を丁寧に描写してきた。
そんな作品において、いきなり相手をハグするえれなの父は配慮が足りず、不適切ではないかと思ってしまった。
いくらメキシコでは挨拶でハグするのが普通であっても、日本で長く暮らしている人間が、日本において、初対面の相手に、何の説明もなしにいきなり相手を抱きしめる、というのは、かなり乱暴な挨拶である。
幸いプリキュアの3人に気にする様子はなかったが、抱きしめられることを嫌がる子もいるだろうし、場合によってはセクハラにもなり得るはずだ。
製作者達は、おそらく様々な挨拶の仕方があり、それを受け入れることが多様性を尊重することだと伝えたかったのだと思う。
しかし、相手の文化を「一方的に」受け入れるだけが、多様性を尊重することではない。自分と他者が「お互いに」相手の文化を受け入れ合うことこそ、多様性において最も大切なことではないだろうか。
そういう意味で、えれなの父のハグは多様性を軽視した、一方的な行為だったと考える。
トゥインクルプリキュアはすごく楽しく見させてもらっているし、多様性というもはやありふれた言葉について改めて考えさせられる優れた作品だと思う。
だからこそ、たった一場面の取るに足らない行為についても、考えずにはいられなかった。
願わくば、えれなの父にも握手や声かけによる挨拶を覚えてくれるようになってほしい。
(えれなの母もハグによる挨拶をしていて、それも問題だと思うが、そちらは異文化の問題というよりジェンダーの問題だと思ったのでここでは取り上げなかった)