私には大学生の息子がいる。他県の大学に進学したので、息子は一人暮らしをしている、と思っていた。
私は息子にあることを伝えに、アポなしで息子のアパートに訪れたが、不在だった。
そりゃそうだ。大学生そんなに暇じゃない。
仕方ないので、部屋の前で待つことにした。とんでもなく暑い。
しかしここで逃げてはもう伝える勇気が出そうになかったので、500mlペットボトルのお茶をちびちび飲みつつ待つこと2時間。
息子が来た。前に帰ってきた時と変わらない様子で安心した。
でも隣には知らない女の子がいた。彼女がいるとは聞いていなかったが、彼女だろうと咄嗟に判断した。
タイミングの悪い時に来てしまったと私が少し慌てていると、息子もこちらに気づいて少し慌てていた。
私と息子が焦っているのをよそに、その女の子は冷静に言った。
「このおばさん誰?」
おばさん。そうだ、私はおばさんだ。
しかし、見ず知らずの人に『このおばさん誰?』と聞けるのは小学生くらいまでじゃなかろうか。
息子に彼女がいたことと、タイミングが悪かったことと、どストレートに「おばさん」と言われたこととで私の頭の中は一層パニックになった。
おばさん、そうか。そう言われても仕方ない。歳もそうだが、息子と私は全く顔が似ていない。
息子は焦って「かあさん」とだけ紹介してくれた。
私も「母の○子です。突然すみません。」と言った。
しかし彼女はいたって冷静だ。彼氏の母親におばさんと発してしまったことに全く焦りがないようだ。
ちろくん?一郎だから「ちろくん」なのかな?というか一緒に住んでるんかい。
「○子さん、上がってください。部屋汚いですけど。」
あやかと名乗る女の子が私を部屋へ誘導するまでわずか1分足らず。先頭を切る彼女に、私と息子はただついて行くしかできなかった。
なんなんだろう。頭が全く追いついていない。息子も焦っているのが伝わってくる。血は繋がっていないが、性格は私に似てしまった。本当にごめんよ。
汚いと言いつつ、部屋はよく整頓されていた。息子がちゃんとした生活を送れているようで安心したのと同時に、掃除してくれているであろう彼女に感謝の気持ちが湧いた。
私が部屋を見渡している間に、彼女はお茶とお菓子を用意している。よく客でもくるのだろうか。手際が良すぎる。その間ずっと息子は空気のようだった。
もともとうまく立ち回れる器用な子どもではないが、あまりの空気っぷりに少し情けなく思ってしまった。そんなとこも可愛いのだが。
しみじみとしていると冷たいお茶とアルフォートと星たべよが出てきた。全部好きだ。有難い。
有難いのだが、今日は息子に大事な話をしにきた。十数年間、いつか言わねばと思っていたが、なかなか勇気が出なかった。
今日ならいけるかも知れないと、思いつきと衝動だけでここまで来た。どうしても息子と2人で話がしたい。
私の気持ちとは裏腹に、気づけば3人で机を囲んでいた。
思い出すと頭が痛くなって来たので続く。
つづきは3Pですね わかります
ばあさんは増田やめてください