そういって両親と、兄と弟と一緒に行ったのを覚えている。
園内はもうすぐ潰れてしまう遊園地なだけあって空いていて、私は家の形をしたアトラクションがガタガタ揺れるだけのパニックハウスをえらく気に入り何度も乗った。乗客は毎度私ひとりで、アトラクションが終わるたびに係りのお姉さんに退出を命じられ、また乗った。お姉さん面倒臭かっただろうな。
さすがに他のにもいきなさいと母親に促されて、古代エジプトっぽい装飾のなされたアトラクションに並んだ。ひとりで並んでいる間、前にいた大学生男女のグループがアトラクションの説明文を読みながら「これちょっとエッチじゃね?」と笑っていた。何がだろうと思って説明が書かれたパネルを覗こうとしたが、大学生たちで見えなかった。
そのうち順番がやってきて、建物の中に入った。結局アトラクションの説明を読めなかったのでどういう趣旨なのかわからないまま、個室に入った。係りの人が持ってきたゴーグルを着けて映像を見るというものらしいとわかって、個室の椅子に腰掛けて係りの人を待った。
しばらくするとメガネをかけた線の細いお兄さんがやってきて
そう言って私のスカートを捲り上げた。
え、と思った次の瞬間には、お兄さんは小慣れた手つきで私のパンツをずりおろし、いわゆる「くぱぁ」をされた。
お兄さんはしばらく私の未発達な性器を凝視した後、私にゴーグルを渡し、アトラクションの趣旨を説明して出ていった。
なんとなく、良くないことをされたんだなと思った。
きっと私はこれからメガネの男性が怖いと感じるようになるんだろうな、と思ったのを覚えている。
大学生たちが言ってた「エッチなこと」ってこれのことだったのだろうか?と少し納得した。
映像が終わると、「あなたがどのような性格なのか」を占う診断結果が印刷された紙を渡された。
それを持って、外で待つ母親に駆け寄った。
「気が強くて負けず嫌いやって。当たってるなぁ」
そう言って私の診断結果を熟読する母親に、メガネの男にされたことを言うべきかなっと思ったけれど、どう説明すればいいのかわからなかった。
何を持って導き出されたのかはわからないが、母親が当たっていると絶賛する診断結果を羨ましいと言って、兄もそのアトラクションに行くと言った。
やめたほうがいいよと言おうと思ったが、お兄ちゃんも同じ目に合えばさすがにお母さんに言ってくれるだろうと思った。そしたら私の被害も名乗り出ようと思った。
結局、兄は明るい顔で診断結果を持ち帰ってきた。男の子にはしないのだろうか。
お母さん、私、その診断結果みたいに気が強い子じゃないと思うよ。
私は別にその事件で酷く心を病むことも、メガネの男性を酷く怖がるようにもならなかった。
ただ、たまに思い出して、あれは何だったんだろうと思う。
メガネの男の大胆で慣れた様子から、きっと被害に遭ったのは私だけではないのだろうなとも思う。
ただもう10年以上経っていて、遊園地もとっくに潰れていて、私の記憶も曖昧で、なにも確かめることはできない。
冒頭、幼女と書いてあるが、実際には小学校中〜高学年くらいの話だと思う。
でも私の記憶はなんとなくもっと幼い5歳くらいのような気がしているのだ。
でもその遊園地の閉園時期や、弟が生まれた時期、ひとりでアトラクションに並んでいたことを考えると、未就学児だった可能性は限りなくゼロで、小学校5年生くらいが妥当な年齢である。