親は親の実家に引っ込み、九州の田舎町に住んでいる。俺も年に一度くらい実家に帰る。結婚して30歳を超えてから、友人の親の不幸を聞く機会も増えてきた。たまに親の顔も見ないといけないかみたいな発想にはやはりなる。なんとか取れた連休を使って、航空機で片道2.5時間、陸路を含めると5-6時間の旅をして片田舎の実家にたどり着く。
自然の多い地域の観光は楽しい。めったに見られないような壮大な山を見たり、滝を見たり。あと食いものがうまい。恐ろしくうまい肉や野菜が奇妙なほどに安値で売られている。肉の加工場も併設しているような肉屋が、国産の肉を東京の西友より安い価格で売っているのだ。
一方で、家族と話すのが大変なことが増えた。特に、兄と話すのが辛い。
地元にとどまって家庭を持っている兄は子供が4人。地方都市の経済状況を反映してか、さほど潤っているわけではなく生活は厳しそうである。でも子供は作るらしい。娯楽といえばテレビか野球(特に高校野球が好きなようだ)観戦かイオンに行くこと。彼の興味といえば今年のプロ野球のドラフトと車であり、俺のテクノロジやマネジメントについての話には興味がなさそうだ。
典型的な田舎のマイルドヤンキーセグメントに属しており、はっきり言って俺には兄が一切理解できない。だが、あの町では俺のように彼らを訝しく見る人間の方が少数派で、父も母も周囲の人々も同じように考えて振る舞っている。彼らのコミュニティにとっては俺のように社会や経済に関心を持ったり、暇な時に読書をしたりする人間こそが訝しがられる側なのだ。
なんというか、彼らには彼らの幸せがあることは理解しているし、変化を求める気も全くない。多くの子供がおり、金に困りながらもいろんなトラブルを乗り越えて行くのだろう。そしてその子供もまた同じ生活を繰り返す。だが、どうしてもそういうスタイルの人々を俺自身は見下してしまい、彼らと心から仲良くすることができないのだ。率直に言って、無知な兄と話すのは苦痛ですらある。
出家して林に住む。