2017-09-19

リピートするのは酔いどれの摂理

輪廻って本当にあるのかな」

「何いきなり。宗教的な話とか嫌いじゃなかった?」

だって俺、この景色を前にも見たぞ」

「そりゃそうでしょ、毎日乗ってる電車なんだし」

しかもさっきから、次に起きることが分かる気がする」

ループしてるってこと? デジャブってやつじゃない?」

「いや、もっとはっきり分かるんだ。たとえば次の新橋駅で、飲み会帰りのサラリーマンがたくさん乗ってくる」

ループじゃなくたってそのくらい想像できるよ」

酔っ払い達が大量に乗ってくるんだぞ」

「そりゃ金曜夜だしねぇ。ていうかそれ、輪廻じゃなくて、何だっけ……思い出せないな」

「なに、違った?」

だって生き返る話じゃないでしょ? 輪廻って生まれ変わる話だよ」

「よくわかんないんだ。こういうの何ていうんだっけ?」

現在から過去に戻って繰り返す……あ、そうそう、タイムリープだ!」

タイムリープか。そういえば聞いたことあるなぁ」

「あー、でもおかしいな」

「何が?」

過去への巻き戻りを起こす人は、時間を操るガジェットとかを持ってたりするんだ」

タイムマシーンとか? そんなの持ってないぞ」

「そうね。あなたの狭いワンルームにそんなものを置く余裕がないことくらい知ってるよ」

余計なお世話です」

「すると残るは時間を操る超能力って線だけど、あなたがもし超能力を持ってて、それをずっと隠していたなら、今が危機的状況じゃないと変なんだけど」

「どういう意味?」

未来から来たあなたの正体は悪の組織と戦うヒーローで、超能力を隠しながら現代社会に溶け込んでいるの。それが危機的状況に陥り、ヒロインである私はあなたの真の姿を知ってしまうのであった」

「多分ツッコんだほうが良いんだろうけど、面白いから放っとくのもいいかも」

「もしくはあなたのほうが悪者で、私は騙されている清純可憐少女で」

「でも少女って、もうすぐ30……」

「うるさい、まだ29だっつーの。それでね、そうね……ドアの所に夜なのにサングラスかけてる女の人がいるでしょ? あの人が私を助けに来た主人公

「うーん、どっちも嫌だな。平和なほうがいいなぁ」

「あとは本人の力じゃなくて、巻き込まれファンタジーって線もあるか」

「勘弁してくれ」

歴史を守る時の女神と、改変しようとする悪しき神がいて、あなたはただの無力な男にも関わらず、その戦いに巻き込まれたの」

「ノリノリですね。知らなかったけど、そういうの好きなんだ?」

「確かに嫌いじゃないです。はい

「意外な一面だ。なんというか、非常に良いっす」

「すいません、突っ走りすぎました」

「たまには良いでしょ。でさ、それより本題に戻ろう」

「うん。前にこの景色を見た気がするって話ね。他に何か、違和感とかない?」

違和感ねぇ……あのさ、もしかしたらだけど、俺たちもだいぶ酔っ払ったのかな」

「何か気づいた?」

「たぶんだけど、俺の記憶が正しければ……この会話自体も繰り返しになってる気がするぞ」

「そうかな? 言われてみれば、さっきも似たようなこと喋ったかも……」

「もしかたらこの会話自体が、まるで」

「できそこないの、しりとり

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