「輪廻って本当にあるのかな」
「何いきなり。宗教的な話とか嫌いじゃなかった?」
「ループしてるってこと? デジャブってやつじゃない?」
「いや、もっとはっきり分かるんだ。たとえば次の新橋駅で、飲み会帰りのサラリーマンがたくさん乗ってくる」
「酔っ払い達が大量に乗ってくるんだぞ」
「そりゃ金曜夜だしねぇ。ていうかそれ、輪廻じゃなくて、何だっけ……思い出せないな」
「なに、違った?」
「だって生き返る話じゃないでしょ? 輪廻って生まれ変わる話だよ」
「よくわかんないんだ。こういうの何ていうんだっけ?」
「現在から過去に戻って繰り返す……あ、そうそう、タイムリープだ!」
「あー、でもおかしいな」
「何が?」
「過去への巻き戻りを起こす人は、時間を操るガジェットとかを持ってたりするんだ」
「タイムマシーンとか? そんなの持ってないぞ」
「そうね。あなたの狭いワンルームにそんなものを置く余裕がないことくらい知ってるよ」
「余計なお世話です」
「すると残るは時間を操る超能力って線だけど、あなたがもし超能力を持ってて、それをずっと隠していたなら、今が危機的状況じゃないと変なんだけど」
「どういう意味?」
「未来から来たあなたの正体は悪の組織と戦うヒーローで、超能力を隠しながら現代社会に溶け込んでいるの。それが危機的状況に陥り、ヒロインである私はあなたの真の姿を知ってしまうのであった」
「多分ツッコんだほうが良いんだろうけど、面白いから放っとくのもいいかも」
「もしくはあなたのほうが悪者で、私は騙されている清純可憐な少女で」
「でも少女って、もうすぐ30……」
「うるさい、まだ29だっつーの。それでね、そうね……ドアの所に夜なのにサングラスかけてる女の人がいるでしょ? あの人が私を助けに来た主人公」
「うーん、どっちも嫌だな。平和なほうがいいなぁ」
「あとは本人の力じゃなくて、巻き込まれ系ファンタジーって線もあるか」
「勘弁してくれ」
「歴史を守る時の女神と、改変しようとする悪しき神がいて、あなたはただの無力な男にも関わらず、その戦いに巻き込まれたの」
「ノリノリですね。知らなかったけど、そういうの好きなんだ?」
「確かに嫌いじゃないです。はい」
「意外な一面だ。なんというか、非常に良いっす」
「すいません、突っ走りすぎました」
「たまには良いでしょ。でさ、それより本題に戻ろう」
「うん。前にこの景色を見た気がするって話ね。他に何か、違和感とかない?」
「違和感ねぇ……あのさ、もしかしたらだけど、俺たちもだいぶ酔っ払ったのかな」
「何か気づいた?」
「たぶんだけど、俺の記憶が正しければ……この会話自体も繰り返しになってる気がするぞ」
「そうかな? 言われてみれば、さっきも似たようなこと喋ったかも……」
「できそこないの、しりとり」