単独女性というカテゴリだったので入店に必要なものはなく、飲み物とつまみと服をどれにするか聞かれる。無難に布面積のある服を選ぶと更衣室を案内された。しっかりと鍵のかかるロッカーに荷物を放り込みながら、すごいところへ来てしまったのではと思った。
着替えて出るとソファー席へと案内される。先に着替えていた知人はとっくに誰かと話をしているらしい。店内にはカウンター席もあったのだが、どうやら常連の人が座っているらしく挨拶だけだった。
案内された席の隣には男性が一人で座っていた。彼に挨拶すると、突然『いやあ未成年の頃殺人で留置所いたんだけどさあ』という話を振られた。どう返すべきか考え込んだせいで固まってるところを突然、拳骨で4、5発殴られてさらに困惑。相手のつけていた指輪が頬骨に直撃したせいで皮膚が切れた。打ち所が悪かったのか、カウンターの上でうるさく喘いでいた女性の声が少し遠くなる。
様子を伺ってはいたらしい店員がこちらへ駆けてきて「お客様そういったことは困ります」と言っているのは聞こえた。彼が「ちゃんと同意のうえです」などと言っているので首を振って否定したし声に出して違うとも訴えたのだが、聞こえなかったことにしたらしい。節度をわきまえてくださいねなどと言いつつ、店員はカウンターへと戻っていった。
その後も同じような感じで、平手も含めると計30発近くは殴られたように思う。ちゃんと数えてはないけど。
相手が喫煙所へ立った際に店員にもう帰る旨を伝えると、相手の男性には先に帰ることをきちんと話したか聞かれた。話すわけねーだろバーカ! とは言わずに「殴られて痛いんで帰りたい」と言うと、同意のうえでのことを持ち出されても困るなどと言い出す。同意じゃないって訴えただろと言っても聞いていませんの一点張りで、思わず張り倒したくなった。
ごねまくったのが効いたのか、程なくして帰れることにはなった。見える範囲に知人は居なかったのでどうやら個室で楽しんでいるようだ。
あいつと遊ぶのはもうやめようと決心しつつ男女兼用の更衣室で着替えていたら、急にドアが開いた。先ほどまで喫煙所に行っていたはずのヤツが立っている。そのままこちらへ来てことに及ぼうとされたので、とっさに急所を蹴り飛ばしてしまった。きれいに決まって蹲ったので腹に蹴りを入れた。荷物を持って受付まで戻り、ロッカールームの鍵を返却してダッシュで店を飛びだす。
眩暈がして階段を滑り落ちたけど、最後に仕返しできてちょっとスカッとした気分だった。聞こえ方はちょっとぼんやりしてたし、目の周りは腫れていたけど。
でも蹴りを入れなければ、傷害とはいわずとも警察に垂れ込むくらいのことは出来たかなとはちょっと思った。
ところでいくらハプニングバーでも、カウンターの上で全裸のねーちゃんが喘いでいるのはアウトだった気がするんだけどセーフだったっけ。