彼に逢いたい。
成人して、就職して、社会人になってしまって、処女なんて早く捨てたかった。
突然の雨でびしょ濡れになりながら。
最初に家に誘ったのは彼。隙をわざと見せたのは私。
彼に彼女が居たのは知ってた。
私が初めてだと言うと、いいの?と聞いて
その日を境に、よく電話がかかってくるようになった。
向こうから、嫌なことがあったと言って情けない声で電話がかかってくることもあった。
誘われて夜を一緒にすることもあったし、電話だけの時もあった。
彼女とは別れないだろうと思ってたし、
歳の離れた小娘に本気になるはずがないと思ってたから。
すこし休憩できる場所だったんだと思う。
そんなのが1年続いた頃に、結婚するんだと言われた。
時々電話をする事はあったけど、お互い弱さを見せるような事は無くなった。
子供は2歳になる。
平凡で子育てに追われる日々。
そして、彼の夢を見た。
甘い声と同時に、思い出した。
私の仕事を認めてくれてたこと、
今、あの頃の彼と同じ年齢になって、
過去の彼に恋をしているのかもしれない。
逢いたいけれども、それはしない。決してしない。