2015-09-21

破綻したプロジェクトの事例

「ファスト&スロー」という本に出てきた、著者自ら指揮をとった失敗プロジェクトの事例が大変面白かったのでまとめてみた。

著者はイスラエル出身ユダヤ人であるダニエル・カーネマンという心理学者行動経済学者。

本の執筆ソフトウェア開発プロジェクトに似ていると思っていたが、改めてそう感じた。


(以下本文)


著者はイスラエル教育省の役人に、判断意思決定に関する高校生向けの授業を行う必要性を認めさせ、カリキュラム作成教科書執筆プロジェクトのチームを結成した。チームは信頼できるメンバーで結成し、当時ヘブライ大学教育大学院の院長をしていたカリキュラム作成専門家セイモア氏にも加わってもらった。


プロジェクトは毎週金曜日の午後に集まって進められ、1年間順調に進んだ。

ある時著者は「このプロジェクトがいつ終わるかを皆で予想する」という試みを思いつき、実行してみることにした。

予想の精度を高めるため、各自は他のメンバー意見を見ずに予想してもらうようにした。

結果は、短いものは1年半、長いものは2年半後に終わるという予想であった。


その時著者はまた思いつき、専門家であるセイモア氏に「今までに似たようなチームが似たようなプロジェクトに取り組むのを見たことがあるか」と尋ねてみた。

セイモア氏はいくつも見てきており、よく知っているとのことだった。

そこで著者はさら質問した。「今までの事例だと、今の私達のプロジェクトと同程度の段階から完成まで何年ぐらいかかりましたか


セイモア氏はしばらく黙ってから答えたが、頬は紅潮しており、自分の答えに困惑しているようだった。

「このことには全く気づいていなかったのだが、正直に言うと、すべてのプロジェクト完了したわけではなく、かなりのチームは完成に至らなかった」

著者は失敗する可能性など考えてもいなかったので不安が募った。

どれぐらいの割合が失敗に終わったのかと尋ねると、およそ40%という返事だった。部屋中に重苦しい雰囲気が立ち込めた。

次に、完成したチームは何年ぐらいかかったかと尋ねたところ、「7年以下で終わったチームは無かったが、10年以上かかったチームもなかった」との答えだった。

著者は藁をも掴む思いで「このチームのスキルリソースは今まで見てきたチームと比べてどうか」と尋ねたところ、セイモア氏は「我々は平均以下だ。だが、大幅に下回っているわけでもない」と答えた。

全員にとって驚天動地の出来事だった。全員というのはセイモアも含めてである。彼自身の予想も2年半以内の範囲に収まっていたからだ。


著者はその日でプロジェクト打ち切りにすべきだった(40%の確率で失敗するプロジェクトさらに6年も費やす気はどのメンバーさらさら無かった)が、数分間議論したのち、我々はこの事実を見なかったことにして進めることにした。

最終的に教科書は8年後に完成したが、著者はその時にはすでにチームを離れていた。教育省の役人の熱もすっかり冷めており、教科書は一度も使われずにお蔵入りとなった。

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