2014-11-27

誤った固定観念を崩す

ちょっと前に新しい上司がおれの部署にやってきた。Aさんとしよう。課長だ。

温厚そうで押しの弱い感じで、本人もわりとへりくだった振る舞いをしていたので、周囲からは軽く見られていたように思う。


ある日Aさんから工数見積もりを頼まれたので早速見積もった。過去の慣例を踏襲して「この客でこの規模の案件ならこんなもんだろ」というところで見積もってメールしたところ、Aさんがやってきて「これじゃ少なくないですか?」と言うので、過去見積もりなんか引っ張ってきて「たぶんこんな予算感だと思うんですよ。」などと答えた。


まあわかってくれるだろと思っていたら、「いや。これじゃ赤字ですよね。」と言って納得しない。ちょっと押し問答気味になったので、古株の名前を挙げて「んー。Bさんがこのお客の案件を一番やってるので、Bさんとちょっと話していただくとニュアンスが伝わるかもです。」と言った(正直、ちょっとめんどくさかったので)。


Bさんはおれの見積もりを見て、「あー。こんなもんすよ。たぶんこれ以上は取れないです。」とか言っていて、Aさんをあしらっていた。

Aさんは担当営業とも話したが、「これ以上取ろうとしたら、お客さんに怒られますよ。」などと、営業からも同じようなことを言われていた。

この客は「予算が無い。」の一言で安い見積もりを強要するうえ、要件追加や変更の際も追加工数など出す気はサラサラないタイプだ。利益は無いが売り上げはそこそこあるので、営業が断らない。まあ、保守費用まで考えればトントンといったところ。

Aさんは納得いかないらしくまたおれのところにやってきて「ちゃんと必要工数出してみてもらえないですか。」と言って来た。めんどくさかったので「じゃあ、まあ。。」などと嫌そうな感じ全開で引き受けた。

元の倍くらいの工数になった見積もりをAさんにメールしたら、見積もりの明細をもっと細かく書けと言う。めんどくささMAXやる気ゼロ適当な明細を書いた。が、「まあ、これが本来必要工数なんだよな。」とは思った。

Aさんはその見積もりを客に提示しようとしたところ、当然営業からストップがかかる。そこでひとモメしたがAさんが押し切った。

見積もりを見た客からお怒り電話が営業にかかってくる。「なにこの金額!」

打ち合わせが設定され、営業とAさん&おれで話をしに行く。で、Aさんは説明する。何が必要か、なんで必要か、省くとどれだけリスクが増大するか。話は平行線で、双方持ち帰り検討として次の打ち合わせが設定された。

この辺からおれのAさんに対する印象が変わってきた。根拠の無い慣例に流されず、本来考慮すべきことを考慮し、説明するべきことを説明する強い意思がある人ということなんじゃないかと。

おれはゴリ押しする客に辟易しつつもそれに流されていただけじゃないかと。

へこへことディスカウントしようとする営業をけん制しつつ客の説得をあきらめないAさんにおれも味方することにした。

見積もりの根拠や明細を説得力のあるものにして、Aさんとどう説明するかを話し合った。営業やBさんの目は冷やかだった。

説得の材料を持って再度の打ち合わに臨み、おれとAさんは一つ一つ根拠を挙げ、なぜそれだけ工数必要なのかを客に説明した。

申し訳ありませんが、ご指定予算で出来ることはこのくらいです。」と当初のスコープを大幅に縮小した作業範囲提示しつつ、Aさんは言いきった。


その打ち合わせの翌日、おれとAさんは部長に呼ばれ、その客の担当を降ろされた。

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