GW、久しぶりに帰省したので昔良く通っていたゲーセンを巡ってみたんだが、ほとんど潰れてた。一軒だけ、通ってた高校の傍にある店はまだ営業してたけど、そこにも客が1人しかいなかった。
そのゲーセン、LSI(仮称)は本当に学校のすぐ傍、歩いて五分もかからない場所にあったので、当時は夕方になると母校の生徒でいっぱいだった(ちなみに男子校なので男しかいない)。自分は、新しいゲームが出た直後などは昼休みにも通っていた。さすがに、その時代、90年代中盤でも昼休みの時間帯は誰も客がいないことが多かったので、心ゆくまで格ゲーの一人プレイを練習することが出来、重宝した。稀に、先客がいる場合もあって、これはそのままの意味で、「ゲーセンで会った不思議な女の子」になってしまうんだが、常にジャージ姿の、中学生くらいの女の子だった。
昼休みにLSIに通っていた奴は他にも何人かおり、彼らも少女を見かけていたので、当然、あれは何なんだ、という話が何回か出た。LSIは小さいゲーセンで、奥にあるドアからたまにその向こうを覗く機会があった。そこは生活感のある、畳敷きの部屋だった。そして、その部屋から筐体の修理に出てくるおっさんはどうも普段からそこに住んでるように思われた。つまり、LSIはゲーセン兼住居であり、あの女の子は、おっさんの、不登校かなんかの娘なのでは、というのが有力な説だった。個人的には、おっさんが人の親であるとは到底思えなかったので、その説は筋が悪いのではないか、と感じていたが、誰も、おっさんや、女の子に訊ねて確認しなかったので真相はわからなかった。とはいえ、実は一度、その女の子と話をしたことがある。自分は、左手にぱっと見でわかるような障害がある。レバーを持って遊ぶ分には全く問題ないのだが、それで不自由なく遊んでいるのが不思議だったようで、左手について突然聞かれた。その時は、失礼だなぁとも思わず、普通に動くので大丈夫です、と説明して午後の授業に戻った。
というような思い出のあるLSIに十数年ぶりに行ったわけだが、相変わらずにビデオゲーム主体で代わり映えのないレイアウト、到底利益が確保できるとは思えないけど、いまも夕方になると繁盛するのかなぁ、この時間は客が1人しかいないけど、ともう一人の客をしっかりと確認したところで驚いた。高校時代に見かけた女の子とそっくり同じジャージを着ている。というか同じジャージなだけでなく同じ人なのでは? と思い、掛けていたGoogleグラスを外してよく見ようとするとすると女の子がいない。ちょっと混乱して、メガネをかけ直し店の入口を振り返るとすぐ傍に女の子が立っている。ちょっと怖くなってもう一度グラスを外そうとすると今度は右手が動かず外せない。これは、Googleグラスを通じて脳をHackingされている!? このまま身動きがとれなければ、ゲーセンの精、もしくは電子妖怪である彼女に縊り殺されてしまう……。
ところで、私は左手に障害があるといったが、正確には障害ではなく、幼い頃、切り落とされた本来の左手の替りに、"鬼の手"が付けられている。これは私の体の一部分ではないので、宿主の危機に反応し少女を脅威、もしくは獲物と感知して勝手に攻撃を開始しようとしたが、それよりも速く、大量の無意味な情報をメガネ経由で送りつけられた私の脳は活動を停止し、私は死んだ……。