もちろん、夢の中の話だ。
現実にできたら、苦労しない。
私はその同僚のことが嫌いである。
しかし、従業員50人にも満たない会社のため、全く関わらないということができない。
少し過去に遡る。
そいつは、「俺にやれってことですか?」って口答えした。
お前にやらない理由がないのに、なんで口答えするのか? (こっちは、断らせないために、やらない理由がないのを知っているし、そいつの上長に○○さんに××の仕事頼んでいいですか?と許可を得た上で、依頼してる)
出来ない理由があるなら、断った上で理由を言えよ。「Could you〜?」って疑問文で聞かれたら、yesかnoで答えろって中学校で習っただろボケ。質問を質問で返すな動く生ゴミ。
そう思いながら、頭を下げたくないので、「じゃあいいです」って言って自分でやった。
腹立つ。
お前のせいで私が違う仕事が出来たはずの時間を、無駄にしたってこと、分かってんのかゴミカス。
お前は金を産まない仕事なのに、金を産む仕事をしてる私の時間を無駄にしたことは、たかが数十分とはいえ損失だぞ。
お前、自分の存在がコストでしかない上に、携帯端末の導入を要求して、その分の費用を回収するほど業務の改善すらしてねえくせに、よくデカい顔して仕事してられるな。
腹立つ。
回想終わり。
夢の中で、その時と同じシーンが再現された。
そいつの口答えの内容も、場所も、私が手に持っていたものも、忠実に再現された。
私は我慢しなかった。
まずは、バインダーの角で脳天を割る。「ってー」とか言ってる間に、鼻をグーパンで折る。最高の気分だった。
腹を蹴飛ばして、転んだところを上から踏みつける。KKOの腹は感触がきもちわるい。
あばらを踏みつける。子供の頃、木の枝を折ったり、氷柱を踏みつけたり、草っ原を駆け回ったりするのと、同じ感触だった。鼻グーパン以上の快感。
相手は何も言わない。ただ、攻撃を受けるたびに気色悪い呻き声を上げるだけ。小さい身体を小さく丸めて私の攻撃が集中する顔と腹を守っていた。カブトムシの幼虫みたいだった。
だから、私は、背中を安全靴の爪先でサッカーボールのように蹴飛ばした。(普段は安全靴なんて履いていないが、夢は都合が良い。)
整体の先生が、ココの筋肉をほぐすと良いよと教えてくれた、あばらの終わりを目掛けて何度も何度も蹴飛ばした。感触は、サッカーボールというよりも、フィットネスに使うバランスボールのような弾力があった。
ある程度蹴り飛ばし終わると、呻き声も上がらなくなったので、周りを見渡した。
他の同僚が、遠巻きに私を見ていた。
「すみません。ちょっと、カッとなっちゃって…。お騒がせしました。」
夢の中の私は悪気がなさそうに、周りの人に頭を下げた。怒られると思った。
しかし、怒られなかった。
「増田さん、ずっと その人のことでイライラしてたもんね。仕方ないよ。よくあるよくある。」
「まあ、やりすぎだけどね」
数人の同僚が慰めるように、私に声をかけた。
私は、そのまま
「いやいやぁ…抑えられないってダメですよね。社会人失格です。」
「皆さんの手を止めちゃって、ほんとすみません」
「鼻パンチで止めるつもりだったんですけど…」
「あの仕事は自分でやるからいいです。任せられたら良かったんですけど、あの状態じゃ、仕方ないです」
以上が、夢の内容だ。
今日は、「あいつを本当に殴ったら、あの夢が再現できるのかもしれない」という思いが、ずっと頭にこびりついていた。
しかし、現実は現実である。万が一、本当にタコ殴りにできたとしても、同僚から慰められることは決してないだろう。
痛い痛い