ドクターヒルルクが死に際に放った名台詞「人はいつ死ぬと思う?」、俺はこの意味をずっと半分しか分かってなかった。
俺が分かっていたのは「自分に嘘をついて死んだように生きるぐらいなら、思いっきり生きて死んだほうがいい」という部分だけ。
あとはまあ「俺を殺したって、第2第3の俺がきっとお前らを倒すだろう」ぐらいの意味に考えていた。
でもそれだけじゃなかったんだよな。
その漫画の主人公は交通事故で両親をなくしているんだが、その死んだ両親が毒親で、主人公はその思い出にずっと苦しんでんだ。
それでふと口にした「いつまで(親のことを)考えなくちゃいけないのかな いつ忘れれる?」という言葉を聞いて、主人公を引き取った親戚は悲しそうな顔を向けた。
「嫌なことを早く忘れたいよね」なんて顔じゃなくて、「お前はその言葉の残酷さをちゃんと分かっているのか」という顔だった。
俺にはそう見えた。
その時、俺の中でスーっと何かが繋がったんだ。
作りかけだった脳の回路にそっと水が迷い込んできて、その上を伝ってピリリと電気が流れ出したような感触。
そうか、主人公が忘れた時は、主人公の中で両親が完全に死ぬときなんだ。
忘れられるまで、人は生きているんだ。
ヒルルクの桜をチョッパー達が覚えている限り、ヒルルクは生きているんだ。
ヒルルクが胸の中に生きているから、チョッパーは最高の医者を目指すんだ。
もしも忘れてしまったら、後ろめたさから道を諦めて、その重荷から逃げるためにヒルルクの思い出にそっと蓋をしたら、そのときは本当にヒルルクが死んでしまうから。
ドクターヒルルクを殺さないために医者であり続けるトナカイだったんだな・・・俺、ワンピース読めてなかった。
ずっとワンピースのこと馬鹿にしててさ、暴走上がりで国道沿いに住んでて10代で子供生んでトラック野郎とかでメシ食ってるような連中が自己啓発本代わりに読んでる頭の悪い本だと思っててさ、だからちゃんと読み込んでなかったんだ。
恥ずかしいわ。
こんなのちゃんと読んでりゃ小学生だってわかるし、ちゃんと読んでるから皆これが名言だと言ってるんだな。
なんで分からなかったのかなあ。
意思を受け継ぐぐらいのイメージで居たんだけどさ、それよりももっと重いんだよな。
第二の命を受け継いでるんだ。
諦めない限りは生き続けるんだな。
つーかあれだ空島とかだってそうだわ。
そっかー……俺本当にワンピース読めてないわ。