2023-07-12

品のない音がそんなに好きか?

ヴァイオリンの弦の話。

前提として、弦を変えたくらいで演奏の質が向上するほど、ヴァイオリン簡単楽器ではない。

なのでヴァイオリンの弦は好みとコスパで選ぶことになる。

結果、プロアマわずほぼ数種類の定番製品に偏って選ばれてきた歴史がある。

それが今世紀になって勢力図が書き換わってきたというか、ある老舗が出した新製品大人気になっている状況。

これがどうにも理解できないという話を書いてみる。

最初に、ヴァイオリンの弦の最高級品として長らく、そして今なお君臨するオリーブという弦を紹介する。

こちらの試奏の通り、まるでオペラ歌手のような「美しい」以外に形容のしようがない、艶やかに朗々と鳴る、素晴らしい音だ。

正直、これを超えるクオリティの弦はないと断言できるレベル

次に紹介するのが、弦の定番としてプロアマわず最も広く普及しているドミナントという弦。

今風に言うなら上述のオリーブの、ジェネリック的な立ち位置を目指して元々は開発されたそうで、コスパの良さとプレーン音色大成功

とりあえずこれさえ張っておけば、あとはなんの心配も要らないと断言できるくらい、デファクトスタンダードな弦だったり。

通常は4本ある弦のうち最高音だけゴールドブラカットの0.26mmという弦にした組み合わせで使うのが定番

というか、楽器屋の展示品に張ってある弦は高確率でこの組み合わせ。

試奏の通り、温かみのある印象的な音がナイス

というわけで、少なくとも20世紀が終わるまでヴァイオリンの弦はドミナント一強で金持ちオリーブ、こだわりが強いごく一部がその他諸々…というチョイスだった。

それが今世紀に入り、エヴァ・ピラッツィという弦が登場して変わり始めた。

今ではこの弦、プロでも愛用者が大勢いるだけでなく、音大生やアマチュアにも大人気の弦になっているという有様。

しかしこの弦、自分には全く良いと思えないのだ。

この試奏を聴いて読者諸兄はどう思うだろう?

かに分かりやすく華やかでインパクトある音だが、それ以上に品がない

華やか≒音の通りがよく刺激的である反面、ヴァイオリンの持ち味である音の上質さが消えてしまい、嫌らしすぎるサウンドに感じてしまう。

例えるならオリーブドミナントが全年齢向けイラストなのに対し、エヴァはR18っぽさが半端ないのだ。

あるいは濃い味で一口から胃袋を掴みに来るB級グルメとか、生地よりもクリームフルーツばっかりが主張するケーキみたいな。

そりゃ手軽に派手な音を量産できるだろうけど、ヴァイオリンをそんな安っぽいツールにしないでくれよ…という感じ。

で、これはおまけなのだが、自分みたいな人間向けのつもりなのか

「そんなあなたのために、あのエヴァ上位互換製品があるんですよ!」

と言わんばかりの、エヴァ・ピラッツィゴールドという弦があったり。

しかし…肝心の無印エヴァと変わりすぎだろ!

しかも悪い意味アルトっぽいというか、籠もったサウンドしか聞こえないのが残念。

なので全然上位互換じゃねーし。

ということで、弦は引き続きドミナントオリーブリピートしようと思う。

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